肉食
「飯どうする?」
車を発進させてから横目で美月を見ると目をランランとさせていて。
「あたし料理できるよ!」
「マジ?」
「うん。作りたい!臣くん何が食べたい?」
いや、お前。
俺が食いたいもんなんてダントツ美月だけど、それはあえて飲み込んだ。
さっきの今だし、嫌われたくねぇし。
「ん〜何でもいい。ガッツリ食いたい!肉とか」
「肉食?」
クスって笑いながら美月がそう聞いて。
ちょうど赤信号で止まったから美月の前髪をポンって指で弾いた。
「そ、バリバリ肉食。見ての通り!」
「あたしも肉食だもん!」
美月の手が俺の腕を掠めて同じように分けた髪に触れた。
一瞬ジッと見つめ合ってから全身の血液が顔に集中するようで…
「美月こっちきて」
「臣…」
「いいから早く」
半ば強引に美月を引き寄せると、勢いよくその甘い唇に吸い付いた。
肉食美月の半開きの口に舌を捻じ込めると「ンッ…」って声を漏らしながら俺の腕を掴む。
ニュルっとした感触が心地よくて、何回キスしても足りないように思えた。
そんなの初めてで。
確かに行き着く場所への行為としてキスは大事だし、気持ちを伝える一番の触れ合いかもしれねぇ。
だからってずっとチューしてたいなんて思う気持ちはなくって…
そう考えると、キスだけでこんなに身体が熱くなれる相手がいるってことがすげぇことに思えてきた。
美月を知れば知るほど、触れ合えば触れ合うほど、惹かれていくなんて…
「足んねぇっ…」
そう言ってほんの一時のキスを終えると、俺はまたハンドルを握る。
ポーっとした顔で俺を見つめる美月に内心ドキっとしながらも俺は冷静を装って運転を続ける。
「冷蔵庫なんかあったかな。肉はなさそうだから、スーパー寄るね」
「うん!」
「…可愛い」
思わず思った本音が口から出た。
やべ俺、隆二化してねぇ!?
「可愛い」とか口に出すもん?
美月をチラっと見ると嬉しそうに微笑んでいて。
スッと手を伸ばして柔らかくてサラサラな髪を撫でた。
「臣もかっこいいよ」
うわ、このタイミングでそれかよ!
「かっこいい」なんて正直なところ、言われなれていたりするけど、美月に言われる言葉全部が俺の魂に響くようなそんな感覚だったんだ。