邪魔者
このまま連れて帰ってもいいかな。
美月を抱きしめてる腕を緩めて手を繋ぐ。
指を絡めると「あったかい、臣くん」口端を緩めている美月を見て、俺の胸の中がまで温かくなっていくようだ。
つーかさっき俺、告ろうとしたのに直ちゃんに邪魔されて。
美月、気づいたかな?
俺が告ろうとしたの。
チラッと隣を見るとご機嫌な様子で。
俺は腕をクイッと引っ張って美月の視線を引き寄せた。
「さっき言おうとしたんだけど…」
「え?」
「分かってると思うけど俺、美月のこと…」
「臣くーん!!!」
…はぁ!?
チッ…。
思わず出た舌打ち。
今一番いいところなんだけど。
イラつく気持ちを抑えて振り返った俺に手を振って近づいてくる女。
お店の大事な大事なお客。
隣に美月がいるの、見えてねぇの、こいつ。
完全に美月のことスルーして俺の腕を取って絡みついた。
「下から臣くんが見えたから走ってきたのっ!ねぇねぇ、これから飲みに行こうよ。また臣くんの歌聴きたいなぁ〜」
下から上目遣いで、胸を腕に押し付けてくるこの女が嫌で仕方ない。
今までそんな嫌悪感はなかったのに。
「…広臣」
すっごい目で俺を見ている美月。
ああそっか。
隣に美月がいるからか。
だから誰にも邪魔されたくねぇんだ。
例えどんな相手であっても。
ちょっとムゥってしている美月がクソ可愛くて。
この女に対してヤキモチを妬く美月がマジ可愛くて仕方ねぇ。
もうちょい見ていたい気もするけど、ここでモタモタしているのもシャクだ。
「あーごめんね。今日は先約!また今度ね。店で待ってるから、さ」
髪を軽く撫でる俺をジィっと見つめて、それからゆっくりと、美月に視線を移す。
「臣くんそちらどなた?」
「な、い、しょ!」
「え?ちょっと、」
「店来てな、また!」
パチってウインクをすると俺は美月の手を取って歩道橋を駆け下りた。
息の上がった美月と会社の駐車場まで歩いて。
「なんかやだ…」
急に美月が立ち止まる。
振り返った俺を見上げるその頬はプゥってしていて。
「臣くんはあたしのなのに…」
…いやそれ、反則だろ。
俺は車に美月を追い込んでそのまま顔を寄せてもう一度そのプルプルな唇にキスをした。