照れ屋は遺伝
初めて触れたその唇はプルってしていて…
これ絶対ぇ癖になる!!
一度離してまた近づく俺に「ダメ臣…みんなが見てる…」真っ赤な美月の泣きそうな声に若干の理性が俺を止めた。
「お前、よくも兄貴の前でチュ、チュ…チュウしたな!!」
「直人、チュウぐらい普通に言えよ。照れてる意味ある?」
「仕方ないよ。直いまでも普通に照れる時あるもん!普通聞かないよね、結婚してるのにチュウしてもいい?とか…」
「ちょっと哲也にそういうのバラすなよ!」
「俺は一度も聞いたことねぇけどな〜」
「あはは、てっちゃんは言う前にしちゃってたもんねぇ!」
…―――無視したくなる会話だけど、兄貴と義姉と幼馴染の兄ちゃんの前でのチューはまずかったか。
美月が無駄に照れ屋なのは兄貴似ってことか。
「直さん、理性が…すいませんっ!」
ダークホースなのか、むしろ落とし穴なのか?
…ただのバカなのか。
俺の言葉に「俺はいいの、お前はダメ!!美月、登坂にチュ、チュ、チュウされそうになったらよけなさい!」…なぜ照れる?直ちゃん。
美月を俺から離して自分の方に引き寄せる直ちゃんは、美月の唇を指でこすろうとしていて。
「もう、直ちゃんのバカ!」
「うん、直はバカ。今のは直が悪い。美月達の初キスが台無しだ」
敵か味方かまだよく分かってないゆきみさんに引き寄せられて美月が俺んとこに戻ってきた。
服の袖をチョコンっと摘んで「ごめんね?」小さく謝る。
俺は美月の肩に腕を回してポンポンって頭を撫でた。
「いーよ、後でちゃんとするから」
「えっ!?今ので終わりじゃないのっ?」
それ言わせるの?
って顔で俺は美月を見つめるけど。
言葉にしないとダメなんだって思って。
「いや、当たり前でしょ。聞いてなかったの?帰さないって…」
「でも帰らないとてっちゃんのシフォンケーキ食べれないし。紅茶味でめちゃくちゃ美味しいんだよ!臣くんだって言ってたじゃん、男でも食えるって!」
「シフォンケーキ…に負けてるのか、俺…」
つい出た独り言に美月がバシっと腕を叩いた。
「臣くんのが勝ってるに決まってるよっ!」
元気よくそう言う美月の耳で我慢のできそうのない俺の声が漏れた。
「そろそろここ出ようって。シフォンケーキ貰って」
「え…?うん」
ギュっと裾を握り締めた美月の顔に小さな覚悟が見え隠れしていた。