品定め
落ち着け俺…。
こんなのどーってことねぇ。
そうまるで自分に言い聞かせてるなんて。
学生の頃から適当に女遊びしてきた俺と親友の隆二。
隆二が今の俺を見たら呆れる!?
大きく深呼吸を繰り返してカフェ【ベローチェ】へ足を進める。
途中、ガラス窓に映った自分のニヤついた顔に足を止めた。
マジマジと自分の顔を見るけど。
俺こんな顔してんだ。
こんな緩い顔に―――させるんだ美月は、俺のこと。
「もう遅いっ!」
もたもたしている俺を迎えに来たのは当たり前に美月で。
いつも自分から手繋いだり腕組んだりすることなんてねぇのに、今に限って俺の腕に絡み付いて引っ張ってく。
奥にあるソファー席に座っているそこに俺を連れてった。
「登坂さん。あたしの…お、、ともだち」
…ガクッ!!
待て待て待て!!!
俺お前の好きな男として、紹介されるつもりだったけど。
横目で美月を見るといっぱいいっぱいって顔で頬を赤く染めながらも口をムンってしていて。
なんかその顔見てたら小さいことはどーでもよく思えてくる。
ポンッて美月の肩に腕を回して横から頭を撫でると、その手をスッと離して頭を下げる。
「初めまして登坂です。美月さんと親しくさせてもらってます」
店長は穏やかに俺を見ているけど、兄貴の直ちゃんとゆきみさんはまるで品定めするみたいにジッと俺を見つめていた。
ひるむ事なくニコッと笑うと、ゆきみさんが大きく目を見開いた。
「直、ダメダメ、私吸い込まれそうっ!」
「うおおおおおおおおいいっ!!意味ないっしょ、それ!」
「あはは、俺が大丈夫って言ってるのに信用ねぇーのな、こいつら!」
ポンッて店長の手がゆきみさんの頭を軽く掠めた。
「だって美月ってなんで毎回イケメン!?前のたっくんもすげぇ、イケメンだったよね…私イケメン弱くて…」
「え、俺って何メン!?」
「直人はただの筋肉バカ!」
…俺達の喋る隙間がねぇ。
なんだこいつら。
そんなことより。
「前はたっくんと付き合ってたの?」
俺はそこだけが重要で。
美月が、「えっ、そこ拾った!?」困ったように眉毛を下げた。
あ、ちょっと可愛い。
困った顔はまた可愛いんだって、我ながら内心ニヤっとしたものの、聞き流せる程大人になりきれていない俺。