Sweet Honey | ナノ

第二の男

肺まで煙を大きく吸いこんで鼻から吐き出す。

数回それを繰り返すとほんの少し落ち着いてきた。



なんか俺、情けなくねぇ?


つーかこれ、妬いてる?



煙草を咥えたまま美月を見ようと店内を覗き込むと、心配顔の美月がこっちに向かって歩いてくる。


あーこうやって心配されんのも悪くねぇなーなんてほんのりニヤついた顔で美月がこっちに来るのを待った。





でも。


あれ?



出てきたと思っていた美月は、店の前で立ち止まっている。

しかもそこにいるの男じゃねぇ!?


吃驚した顔でその男の腕を掴んでいて、つーかおいお前、触ってんじゃねぇぞ、美月にっ!!!



俺の方に来たはずの美月は、その男に捕まってまさかの逆戻り。



「もう直ちゃん吃驚したぁ!」




…誰だよ直ちゃん。

そのチビ誰だっつーの!



「おう直人いらっしゃい!」



店長まで知り合いかよっ!?

って、よく見ると直ちゃんは美月の背中に腕を回していて。



ちょっと馴れ馴れしいよ直ちゃん!!




思っているけど言葉にすることもできず、俺は二本目煙草を咥えたんだ。




「臣くん、どうかした?」



クイッて今更ながら美月が俺の所にやってきた。


エプロン姿の美月は、セミロングの髪を一本で束ねていてスッと細い首がやけに綺麗に見える。



「どうもしねぇよ」

「でも何か怒ってない?」

「怒ってねぇから」



ポンポンって美月の顔も見ないでただ頭を撫でる。



だけど美月は不満気な顔を止めることなく俺を見ていて。


小さく息を吐き出すと俺は美月の手を掴んでそっと指を絡めた。



「店長って元から知り合いだったの?」



俺の言葉に「あ、うん!分かる?」美月の顔がほんのり明るくなる。



ふぅん、やっぱりな。

だから「てっちゃん」なのね。

それが分かればまぁいいや。



「なーんだ、安心した。戻ろ」



美月の手を掴んだまま店内に戻ろうとすると、後ろから「美月っ!?」…女の声に俺達は足を止めた。


振り返った美月は、俺の手から離れて「ゆきみさんっ!」その女に飛びついたんだ。



は、なになに、今度は誰!?

つーか直ちゃんも誰っ!?

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