08


トンって壁に背中と手をつけたまま隆二くんの温もりを感じる私…―――――


甘いチョコが口の中いっぱいに広がって、それを舌で転がす隆二くんからは爽やかな香りがする。

強烈に隆二くんを感じてめまいすらしそう。

でも止めて欲しくない。

ギュっと隆二くんのシャツを握りしめると、その手ごと上から包み込まれた。

絡まっているのは手と舌で…壁についていた手で私の背中を抱き寄せる隆二くん。

距離がまた縮まって胸がドクドクいってる。


「んっ…」


思わず漏れた声に、隆二くんの舌がもっと強く私の舌を絡みとる…

倒れそう…

そんなことを思っていたら、チュってリップ音を立てて名残惜しくも離れていく隆二くん。

そのまま私の胸元に頭をつけて小さく溜息を零す。


「ユヅキさん…甘い…」

「…え?」

「ここ会社だから俺、一応我慢してるんだけど…何かきかねぇや…」


…隆二くんらしからぬ少し乱暴な言葉づかいに照れるわけで。


「髭…あたる…」


鼻と口の間にあるきっと彼のチャームポイントであろう髭をそっと触ると目を細めて笑った。


「これは剃らない…でもキスもいっぱいする…慣れて?」


そんな可愛いこと言われたら頷くしかないのに。

私の頬に手を添えてまた顔を寄せる隆二くんに「うん、慣れてあげる…」小さく言ったら笑いながら唇を重ね合わせた―――――


誰もいないからって。

二人っきりだからって…何度も何度もキスをしているうちに、呼吸も乱れてきて。


「ユヅキさん…俺ん家、連れてってもいいよね?」


しばらくした後、隆二くんがそう言った。

それを望んでいなかったこともないけど、そうなるなんて思ってもみなかったから、心の準備はできているけど、少しの動揺が走る。

でも隆二くんなら大丈夫だって思う。

そこに怖さなんてなくって。


「うん、連れてって」


私の言葉にやっと私を離した隆二くんは帰り支度を始めた。

バイクに跨ってヘルメットを被せてくれた隆二くんは、そのまま安全運転で彼の住むアパートへと私を連れて行った。


「コンビニ寄っていい?」


途中でバイクを停めてそう聞かれて。

私も慌てて下着の変えと歯ブラシとお風呂とメイクセットを買った。


「よかった、ちゃんと泊まってくれそうで」


安心したみたいな隆二くんの言葉にやる気満々具合がバレちゃったのかって羞恥心がわいたけど、「ずっと一緒にいようね」なんて甘い言葉をくれたから、そんな羞恥心はすぐに吹っ飛んだらしい。




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