07
「…おじさん達にからかわれちゃったらユヅキさんが可哀想だなって思ってずっと黙ってたんだけど…」
そう言うと隆二くんは背中に回していた腕を緩く解いて私との間に距離を作った。
見つめる瞳は真剣で優しくて、でもどこか奥に熱いものを感じてならない。
「ずっと好きでした。ユヅキさんのこと…。俺の彼女になってくれませんか?」
待ち望んでいた言葉が、まさかの隆二くんから贈られたんだ。
あまりに突然で、あまりに唐突で、でも今ここで隆二くんが私に嘘をついているとは到底思えなくて。
そんな風に人と接する人じゃないって分かってるから…
「本気…」
「はい」
やっぱりな言葉が私に届いた。
カチカチカチって時計の秒針が動く音がやけに大きく耳に入る。
外を車が通り過ぎる音だったり、騒音が耳に入り込んでくる。
「ダメかな…?」
言葉の出ない私に向かってもう一度隆二くんの声が届いた。
私はブンブンって首を横に振って。
「本当は渡すつもりだったの…」
そう言って隆二くんから離れると、デスクの引き出しを開けてそこに隠してあった本命チョコを差し出したんだ。
驚いた顔でそれを受け取る隆二くん。
「いいの?」
「うん。隆二くんに渡すつもりで買ったから…」
「マジで!?すげぇ嬉しい!!」
滅多に大声なんて出さないのに、感情を爆発させるみたいに喜んでくれる隆二くん。
「今開けてもいいかな?」
「どうぞ…」
丁寧に包みから出して、ココア味の甘いチョコを一粒パクっと口に入れた。
「…うまい…ありがとうユヅキさん」
そう言った隆二くんの手は私の前髪にそっと触れていて。
デスクの後ろ側にある給湯室の壁にそっと私を追い込む。
「明日休みだね、ユヅキさん」
フワリと頬に隆二くんの手が触れて。
「…うん」
「このまま一緒に過ごしたいなユヅキさんと」
「…うん」
「ユヅキ…」
隆二くんの吐息が私の頬にかかって。
迷うことなく目を閉じた私に、甘いココア味のチョコがコロンっと溶けた。
えっ!?
勝手にキスだと思っていたから思わず目を開けた私に「一緒に食べよ」そう言って、ちょっと遅れて隆二くんからのキスが降りてきた―――――
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