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隆二くんがお風呂に入ったのをいいことに可愛くオネダリされたオムライスをそそくさと作った。

ご希望通りケチャップで【りゅうじアイシテル】って書いた私はそれはもうニヤケ顔で。

ふぅーって一息ついたら、リビングのガラステーブルの上に置いてあった隆二くんのスマホがブルルルって震えた。

LINEのメッセージも沢山入っているのか、小さなアイコンがほんの少し視界に入って。

見るつもりじゃなかったけれど、うっかり目にしてしまった。



―――隆二逢いたい―――


見えた文字に息が止まりそうになる。

もしかして、さっきの赤いマフラーの子?

本当は隆二くん私なんかを相手にしてる暇はないんじゃ…


「ユヅキさんお先に」


気付くとラフな部屋着に着替えた隆二くんがいて。

まだ濡れた髪をタオルで拭いている。


「隆二くん電話鳴ってたけど…」

「誰〜?」


軽々しく私にそう言うとスマホを取ってLINEを開いた。

何となく隆二くんを見れなくて。

黙った私をフワリと後ろから抱きしめる隆二くんの身体は、シャワーを浴びたせいでポカポカしている。


「ユヅキさん」


ギュッと強く腕を絡みつけて。


「…なぁに?」

「LINE見えた?」


分かってるんだって。

隆二くんの熱い吐息がうなじにかかってちょっと苦しかった胸が違うドキドキに変わる…そんな気がした。


「ちょっとだけ見えちゃって…」

「ユヅキさんが不安なら何度でも言うから。俺が好きなのはユヅキさん。他の子は申し訳ないけど興味ない。俺を信じてほしい…」


このごに及んで隆二くんが嘘を言ってるようには思えなくて。

相手が隆二くんである限り、この不安は付き物なのかもしれない。

イケメン彼氏を持つ彼女の気持ちを今日初めて知った。


「チョコ…貰わなかったの?」

「ん〜俺甘いの苦手って…」

「苦手だった?」

「本当は好きだよ」

「え?嘘言ったの?」

「俺が欲しいのは世界で一個だけだからねぇ。今夜たっぷり貰うつもりだけど覚悟はできてる?」


くるっと向きを変えて隆二くんのオデコが私のオデコにくっついた。

腰にあてた手で私を抱き寄せながらまるでチークを踊るみたいにユラユラしている私達。


「…甘くて溶けちゃうよ?」


クスッて笑う私の耳朶を甘咬みしてそのまま舌を耳の中に入れた。

身体の奥からこみ上げてくる熱いものに目を閉じると、「オムライス先に食わないとね」優しい隆二くんの声に二人でソファーに座った。



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