ホストの誘惑


「ねぇ…ユヅキちゃんっていつもあんな感じなの?」

「…え?」


中華料理を食べに来た私達。

トイレに立った私を待ち伏せしていたのか、壁に寄りかかっていた剛典が私に近寄ってそう聞いた。

さっぱり何のことを言われたのか分からなくて。

不信に剛典を見ると、フワって犬みたいな笑顔を零した。


「さっき、哲也さんにお仕置きされてたじゃん!啓司さんにちょっと聞いたんだよ。ユヅキちゃんには愛情持って触れないとダメって。哲也さんも臣さんもユヅキちゃんでよく遊んでる…って啓司さんは言ってたけど…」


…哲也のお仕置きはいつもあんな感じだった。

女の私を最大限引き出すような行為をさせる。

最初は勿論拒否したけど、そしたら無理やり哲也に犯されるんじゃないかってぐらいに苛められて…

だったら自分からやるってああなったんだけど。


「何でそんなに楽しそうな顔してんの、剛典…」

「単純にいいな〜って」

「…剛典のルックスだったら女の方から寄ってくるでしょう?ホストだったしそういうのに不自由はないんじゃないの?」


ごもっともな私の言葉に若干のドヤ顔で「まぁね」…あっさりそう答えた。


「やめてよ、剛典まで…。私結構本気でてっちゃん怖いんだから…」

「楽しんでるよね、あの人。啓司さんだけはユヅキちゃんに対してそんな素振り見せてないようにも見えるけど」

「啓司は一度もない。いつも口だけだよ」

「ふうん。じゃあ啓司さんも本気にさせてみたいね」


若干剛典の言ってる意味が分からず…というか、会話が噛みあっていないと思うわけで。


「アキラに拾われてよかったね、剛典。秘密があるなら今のうちにアキラに全部話しておいた方が身のためだよ」

「ないよ秘密なんて。ねぇそれより今夜俺んとこ来なよ?サービスするよ?哲也さんより俺のがユヅキちゃんを満足させる自信あるって」


あっけに取られるというのかなんていうのか。

この子犬が臣や哲也以上に危ない生き物なんじゃないかって。


「それアキラにチクるから私」

「だって俺…一人じゃ眠れないんだもん…なぁ頼むよ。愛情持って触れるから!」


嘘なのか本当なのかさっぱり読めなくて。

でも一人で眠れないのが本当なら、別にそういう対象ってことじゃなくて、単純に傍にいてあげたい…―――そう思うんだ。


「分かった。じゃあ変なことしないって約束して?」

「うん、OK!じゃ約束だよ?」


小指を私に差し出す剛典にそっと指を絡めると、そのままフワっと腕の中に抱きしめられて。

華奢に見えるけど、結構身体分厚いかも…なんて脳内が脱線しかけたなんて。



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