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ベッドの行方
「ユヅキちゃんっ!」
中華料理屋さんから出た私の手首を引っ張ってそのデカイ身体を私に巻きつけるこの男、啓司。
一つだけ忘れてたことがある。
酔うと啓司はすっごくたちが悪い。
理性のタグが完全に外れた啓司は、酔った時だけ私に甘えてくる。
でもそれが普段はない分、むしろ我慢しているのか…加減を知らないんだった。
「げええ!!臣っ助けて!」
慌てて臣の腕を辛うじて掴む私に、「あー啓司さんめっちゃ飲んでたもんなぁ〜」なんて余裕の臣。
啓司にガッツリとホールドされてる私は、正直力じゃとうてい啓司にかなうわけもなく、頭にチューチューキスされている啓司の中でバッタバッタ暴れる私を臣の手だけが繋がっている状態で。
「重いよけーちゃん!」
「だめぇ、今夜は俺とチェックメイト!ぎゃははははははは!!!」
クルリと電信柱を背にすると、そこにドンッと手をつく。
俗に言う”壁ドン”…。
う、嬉しくないっ!!
「ちょっと〜キスする時は目閉じろって〜」
むう〜って唇を突き出して顔を寄せる啓司に、横を通り過ぎようとする臣。
「広臣っ!!!」
思いっきり叫ぶと「はいはいはい!」そう言ってやっと臣が私を啓司のパーソナルスペースから這い出してくれた。
そのままギュっと臣に抱きしめられて耳元でまた囁く。
「おっぱいも触らせてね〜」
「………」
触らせねぇよ!!
「アキラー」
助けてくれた臣からスッと離れてアキラの腕に絡まる。
ぶっちゃけここが一番安全だと思うわけで。
お酒を飲んでいい気分のアキラはスッと私の肩に腕を回してニコっと微笑んだ。
「たまには俺のベッドで寝る?」
「え?アキラの?」
「そう俺」
…それは、考えたことなかったけど。
どうしようか迷っている私に「ちょっと、俺との約束!」剛典が怒った顔でそう言った。
「あ、忘れてた剛典…」
「ひっでぇ、ユヅキちゃん」
でも気付いたのは剛典の後ろにいる哲也。
その視線の先は私なのか、剛典なのか…。
え、あの…
「剛典くんさぁ、俺らの大事なユヅキと一緒に寝るの?」
そのやんわりした言い方がやっぱり物凄く怖くて。
なんなら剛典もちょっとびびって一歩後ろに下がっているし。
「そうだよ、剛典。俺なんてまだ数える程度しか一緒に寝てねーっつーの!」
言ったのは臣で。
別に一緒に寝ることがそんなに大事なこと?なんてちょっと疑問に思う。
でもここの住民達は一人で眠ることをよく思っていなくて。
私の部屋のベッドはいつだって使わないでいた。
泣きそうな顔で私を見る剛典に「諦めろ、今夜は」臣がポンっと肩を叩く。
「ユヅキ、おいで」
結局哲也に腕を引っ張られて私は哲也の部屋へと連れて行かれるんだと…。