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家族同然
「あの俺…家なくて…」
一通り自己紹介が終わった所で剛典がそう言った。
「なんで?」
爽やかな声を出す哲也は、その爽やかな声とは裏腹にやっぱり何だか怖くて。
「女んとこ転々としてたから…」
何故か私を見つめる剛典。
なんだ?
これは、え?
「え、うち!?」
自分を指さして素っ頓狂な声を出す私にニコッと微笑む剛典。
「うち汚いよ、めっちゃ!お、臣がいんじゃないかなぁ?年も近そうだし、ね?」
無理くり臣の名前を出すと、明らかに嫌な顔をされた。
でも根は優しいし、臣はきっと断らな―――「俺女がいいっ!ね、家住ませてっ」…まさかの剛典発信な言葉に、彼が可愛い顔した狼に見えた。
一歩後ろに下がる私をグイって引き寄せたのはアキラ。
デスクに寄りかかっているアキラの足の間にすっぽりと挟み込まれた私の髪を後ろから優しく撫でている。
「あのさ、俺が何で伝説のホストだったか知ってる?」
そんな中臣が口を開いた言葉に剛典はキョトンとしていて。
分かんないって顔で首を傾げている。
臣はチラっとアキラを見てハッキリと言ったんだ。
「アキラさんがバックについてたからだよ。この界隈を仕切ってるのは俺じゃなくてアキラさん。だからアキラさん怒らせんなよ?」
「…はい」
そう言いながらも剛典の視線は私で止まっていて。
まだ何か言いたそうな顔だ。
後ろからガッチリとアキラに包みこまれているから何もできない私のフォローをするかのよう、哲也が仕方ないって感じに口を開いた。
「ユヅキは俺らの大切な家族なの。家族同然なの。ここにいる限り、ユヅキを適当に傷つけたり悲しませるようなことは許せないわけ。真剣な思い以外でユヅキに触れることは許さない…って、このボスは言ってるんだと思う!」
ニヤっと口端を緩めた哲也にフってアキラが鼻で笑った。
改めてそう言われると照れるけど、そうやって思って貰えるのは嬉しいことで。
私もここにいるみんなを大切な家族同然に思っている。
「部屋はいくらでも空いてるから好きに住めよ。明日から剛典はここで働いて貰う。基本的に運転手は現場の送り迎えだから。免許は持ってんな?」
「持ってます」
「じゃあ問題ねぇ。哲也、部屋準備したって?」
「はいよ〜」
哲也に続いて出ていく剛典。
しかし、女んとこを転々としていたって…
「広臣、一応あいつのこと見はっとけよ?」
アキラが私を離してソファーに戻った。
臣は「ういーっす」って言うと「んじゃ飯行く?」車のキーを取り出して私に手を差し出した。