お気楽な男


コンコン…。

ドアを叩くと数秒で開く。


「え?どうしたの?」

「一緒に寝て…」

「マジで!?いいの!?」

「…うん。臣も啓司も部屋にいなかった…」


私が俯くと「あ〜うん…」どこに行ってるのか知って風な剛典に視線をあげた。


「ユヅキちゃんは自分の仕事に集中してるからって哲也さんが!」

「そっか…」

「大歓迎!今シャワーも浴びたからいつでも準備OKだよ俺!」


嬉しそうに尻尾を振る剛典が私の腕を軽く引いて部屋に入れてくれた。

初めて入る剛典の部屋はなんていうか…


「え、汚い…何でこんなに物が散らかってんのっ!?」


至る所に服が散乱していて。

雑誌やら何やらがコロコロ床に転がっている。


「え、普通じゃない?」


なんてことないって顔で私の腕を掴んでベッドに誘導する。

そのまま剛典の胸元に顔面からダイブしていく私を至近距離で覗き込まれて。


「やっぱ可愛いな、ユヅキちゃん。チューするよ?」


無言で剛典を見つめる私の肩に腕を回して引き寄せるとチュって一瞬だけ触れる小さなキスを落とした。

初めて触れるその温もりと感触にドキっとする。

哲也でも臣でもないその温もりに…


「剛典…」

「ん?」

「もっとちゃんとしてよ」


私の言葉にほんの一瞬真顔になったけれど、すぐに笑ってギュウっと私を抱きしめた。


「俺、本気出しちゃうからねっ!」


ドサってベッドの上に押し倒されて。

別に哲也に対して何か思っているわけじゃないけど、何となく気持ちが落ち着かない。

ランランと服を脱がす剛典のお気楽さがほんの少し面白かった。


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