心配の裏側


「一応聞くけど、今日も俺で平気?」


部屋に入ってからそんな言葉を飛ばす哲也。

それ、どーいう意味?

振り返って哲也を見るけどさっぱり分からなくて。


「なんで?」

「ん〜。臣のがいいかな…って、何となく…」

「臣?」

「ユヅキさ…片岡にマジにならないよね、本当に…」


今更なんの心配!?って哲也の言葉に私はコクっと頷いた。

何がそんなに心配なんだろうか?

私が片岡さんを好きになりそうだと思っているんだろうか?

同僚の恋人を寝とって欝にさせて自殺に追い込んだ彼女を持つあの人を。

浮気されて何も知らなかったのは可哀想だけど、そんな女を信じて付き合っているというのなら、せめてその馬鹿さを気づかせてあげようって思ってはいるけど。


「マジってなに?私今まで一度も誰かを好きになったことなんてないよ、てっちゃん」

「…俺は?」

「…え?」

「俺に毎晩抱かれても何とも思わねぇの?」


ど、どうした、哲也?

見つめる哲也は真剣で、ちょっとドキっとする。

それは哲也が奇麗だからであって…そこに何の感情もない。


「思ってて欲しいの?」

「…だよな、冗談!ちょっと試したユヅキのこと!ごめんね」


フワって優しく微笑む哲也にムウ〜って頬を膨らませた。


「てっちゃん?」

「うん?」

「私大丈夫だよ…。心配してくれたんだよね?ありがとう」


そう言うと、ギュっと哲也に抱きしめられた。

温かい安心できる温もりにそっと目を閉じると、哲也がほんの少し距離を作って私に小さくキスをした。

そのまま数回触れ合うだけのキスを素直に受け入れる私。

片岡さんともこうやってキス…するんだろうな…なんてちょっとだけ彼のことが頭をよぎった。




「やっぱ今夜は他でもいい?」


―――どうしてか哲也に拒絶された気分になった。

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