可愛い人
「戻りました〜」
そう言って事務所の中に入った。
奥のデスクでアキラがパソコンに向っていて。
チラっとこっちを見ると「お疲れさん!」小さく微笑んだ。
「無事に接触しましたよ、ユヅキ」
哲也がアキラにそう言うと、視線を身体ごと私に向けた。
「そうか。どんな感じだった?」
「可愛い人だった!」
私の言葉に哲也もアキラもギョっとした表情を見せて。
え、なに?
マズイこと言った?
キョトンとしている私に向かって釘を刺すように告げたんだ。
「分かってると思うけどユヅキ…。感情は持つなよ?持ったら自爆するだけだ…」
アキラの言葉にドキっとした。
でも分かってる、私もそれくらいは。
「分かってるよ。可愛いって思うのはそーいうつもりじゃないし。感情なんて持ってないよ私!」
ほんの少し強めの口調でそう言った。
「そうか、ならいい。今夜は疲れただろうからもう寝ろ」
「…うん。てっちゃん…」
スッと手を伸ばすとその手をギュっと捕まえる哲也。
視線はアキラに向けたままで「いいの、アキラ?」なんて言葉。
「ああ。頼むわ」
「分かった」
そう言ってこっちを向いた哲也は、いつもの哲也の笑顔で。
「じゃ帰ろう」
指を絡めて私を誘導する哲也について彼の部屋へと移動した。