余裕がない弟
「ただいま〜!!」
元気よくシェアハウスのドアを開ける臣。
ほんっと子供みたいだなぁ…なんて思っていながら、そんな臣とキスしたのは私なんだけど。
勢いよく哲也の部屋を開けて中に入っていく臣だけど。
―――数分後、まさかの雨雲を背負った臣が出てきた。
「ダメだったの?」
リビングでソフトをペロっとしていた私の真横に隙間を開けずに座って膝を抱え込む臣。
「ユヅキの温もりがねぇと寝れないよ俺…」
「ダメだったのね〜てっちゃん」
「何でだよぉ、哲也さん。パピコ2個しっかり奪ったくせに…」
グリグリ私の肩に顔を埋め込む臣を見て、ちょうどシャワーから出てきたんであろう、腰にタオル一枚巻いただけの剛典が「一口ちょうだい!」そう言ってペロリと私の唇を舐めた…
「うまっ!俺もソフトにしよ!」
何事もなかったみたいに冷凍庫を開けてソフトを取り出す剛典。
顔を埋めていた臣は今の剛典の行動に気づいていないようで、まだ私に甘えている。
「舐められた、剛典に…」
「…はぁ?」
顔を上げた臣と思った以上に距離が近くて。
「どこを?」
イライラ感満載に臣が私の顔を覗きこんだ。
「唇…」
「は、おい剛典!お前ふざけんなよっ!!」
そう言った臣は立ち上がって剛典に向かっていくのかと思いきや、私の腰に腕を回して抱き寄せると耳元で小さく甘く、囁いたんだ。
「おっぱい触らせて…」
確かにさっき言ってたけど。
イエスとは言ってないものの、臣にその手の台詞を言われたのは覚えている。
ここは普通、剛典に怒るんじゃないんだろうか?
それとも臣ってやっぱ普通じゃないの?
ちぇりーだから余裕がないの?
「ぶっ…」
つい吹き出す私を見てどんどん迫ってくる臣。
だからソファーの上、臣に抱きついてそっと着ていたTシャツの中に臣の手を誘導した。
「触るだけで我慢できるの〜?」
「できねぇけど…」
「こらー」
「あ、これ…外す…」
プチって臣の手が背中のホックを外して直で胸にフワリと触れた。
「あ―――っ…」
出した声は臣で、私の首筋にそのまま舌を絡ませたんだ。