セクハラ

思わずギョっとした顔で隆二を見ると、ニコニコ…っていうよりは、ヘラヘラと笑っていて。

緩い口元が動く度にドキっとするんだ。


「おお!けどユヅキちゃんも最近妙に色気を感じるよなぁ…まさかユヅキちゃんまで!?俺達のアイドルユヅキちゃんが誰かのもんになっちまうのはやっぱ癪だな…。隆二諦めろ!」

「あはははは!アイドルユヅキさん欲しかったなぁ〜俺…」

「二人とも、からかわないで下さいよぉ」


困った顔でそう言う私に向かって隆二がニヒルに微笑んだ気がした。


「それで、実際どうなんですか?彼氏…できちゃいました!?」


あろうことか、隆二の口からそんな言葉が出て。

ポカンと口を開けてしまいそうになる。

そして思うんだ――――隆二の奴、絶対この状況を楽しんでる!って。

優しい瞳はしっかりと私を見据えていて。


「どんな彼氏なんだろう、ユヅキさんのこと落とした奴って、イケメンっすかね?」


前にいる山口さんに同意を求めてそんな会話。


「彼氏なんて別に…」


だから何かちょっと悔しいからそう言ったら隆二がまた微笑んだんだ。

それから視線をゆっくりと私の薬指に移して…まさか!…そう思った時には隆二の口は開いていて。


「それってプレゼントっすか?」


…もう。

わざと否定できなくさせて…

でも次の瞬間山口さんが私の手首を掴んで「え、どれ!?」そう言ったんだ。

ジロジロと私の手を、薬指のリングを見つめる山口さんの腕を逆に掴むのはムスっとした隆二。


「山口さん、セクハラっすよそれ…」


いつもより2トーンぐらい低い声で言う隆二に、今度は私の方が可笑しくて。

山口さんと間違いなんてないけれど、こんな些細な触れ合いも嫌がってくれる隆二の気持ちが嬉しくて、可愛くて…こっそり微笑んだんだ。


「セクハラ?冗談よせよ。ユヅキちゃん別に嫌がってないじゃねぇか?なぁ?」


そう言って私に同意を求める山口さんに向かって満面の笑みで「はい」そう答えた私に隆二の目が大きく見開いた。


「ユヅキさん、ハッキリ言った方がいいっすよ」


そう言ってさりげなく私の腕を掴んで自分の方に引き寄せる隆二に「お前が彼氏みたいだな、何か…」山口さんの言葉に何も答えない隆二。


「別れてくれるんだっけ?可愛い彼女と…?」

「え?」

「私が付き合うって言ったら?」

「…本気っすか?」

「どうだろ…」


クスって笑うと、困ったように隆二も笑った。



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