色男の女

週明け、隆二に貰った指輪をつけて出勤した私。

別にただペアリングをつけているってだけなのに何だか気分上々で。


「おはよう」


そう言ってだんだん増えてくる従業員さん達の中に「おはようございます!」爽やかな声でそう言う隆二を見つけた。

給湯室でみんなのお茶を準備していた私の所に当たり前のようにやってくる隆二。


「ユヅキさんおはようございます!」


そう言ってお茶を入れる私の手伝いを買って出てくれる優男。


「おはよう、隆二くん」

「昨日はよく眠れました?」

「うん、隆二くんは?」


私が聞くとニヤって微笑んで少し屈むと私の耳元で小さく囁くんだ。

―――――「ユヅキが寝かせてくれなくてちょっと寝不足…」なんて…。

思いっきり顔を振り向かせて隆二を見る私にその場でムウって唇を突き出してキスをねだる隆二に、思わず顔がニヤけそうになって。


「こら!お姉さんをからかうな!」


そう言って彼の唇を指で摘まむとそのままサッと彼の横を通り過ぎてお茶を運んだ。

後ろでクスクス笑っている隆二を無視してさっさとお茶を置いていく私。

本当、ズルイんだから!


「山口さんどうぞ」

「ありがとう!そうだ、ユヅキちゃん聞いてよ!」


現場監督である山口さんが私を止めてそんな言葉。


「なんですか?」

「隆二の奴、最近妙に色気づいてる気がしてよ…聞いたんだよ俺。そしたらあいつ…女できたって言ってて。全く色男が!バレンタインで何人の女泣かせて選んだんだよ?って。写メ見せろって言ったら断りやがって!どこのどいつだよ、隆二の心奪った女はさ〜」


山口さんごめんね、それ私…。

言えないから余計に顔が引きつっていたのか、それともこの話題が恥ずかしくて顔が引きつったのか分からないけど私は相当変な顔をしていたようで。


「あ、自分の悪口っすか?朝から二人して!寝不足なんでお手柔らかにお願いしますよ?」


そう言ってポンって私の背中を誰にも気づかれない程度にすれ違いざまに触れた隆二。


「おい、隆二ここに来い!」

「なんすか?」


隆二が私の隣に来て、まじまじと私達二人を見つめる山口さん。


「お前にはユヅキちゃんみたいなしっかりした女が合ってんじゃねぇか?」


キョトンと思わず見つめ合う私と隆二。


「な、山口さん…隆二くんの彼女に失礼ですよ…。隆二くんだって選ぶ権利はありますって―」

「俺ユヅキさんならいいっすよ!彼女と別れても!」


喜んでいいものか…。

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