甘い夜

「隆二ッ…」


そう言ってギュっと彼の背中に腕を回して私の上で止まったまま目を閉じて身体をビクビクと揺らす隆二をギュっと抱きしめた。

汗ばんだその身体を私の上に重ねてからストンっと横に転がって大きく肩を揺らして呼吸を繰り返す隆二を見て幸せ以外の何も感じない。

ありきたりかもしれないけど、バレンタインに結ばれた私と隆二。

それから1カ月の時を越えてホワイトデーを迎えた私達は、あの日と何も変わらない…むしろ大きくなるこの愛を確かめ合っていた。

バレンタインに沢山の人からチョコをもらっていた隆二は、1カ月かけて一人一人断りに行っていた。

ホワイトデーの今日、初めての贈り物で隆二から指輪を貰った。

ペアリングのそれは、一見ペアに見えなくて、若干色合いを変えているからかちゃんと見ないときっと分からないって…そんな隆二の計らいだった。

同じ会社の現場で働く隆二と事務の私。

私達が付き合っていることは勿論会社の人達には誰一人として言っていない。

最初の夜にそうしようって二人で決めたから。

色んな詮索されたくないって…。

事務の私はそうでもないだろうけど、きっと現場の隆二の方がおじさん達にからかわれる可能性は高いだろうし。

だからこれからもこの付き合いは私達の秘密であって、こうしてホワイトデーの夜に誰も私という人間が隆二と一緒に過ごしているなんて思うはずもない。


「身体平気?」


フワっと頭を撫でながらそう言ってくれる隆二。

私の乱れた前髪を指で整えてニッコリ微笑む。


「うん、平気」

「ユヅキとこうしてる時が一番幸せ…」

「隆二…」

「ユヅキは?」

「…私も」

「本当?」

「もう!本当よ」


そう言って隆二に横から抱きつくと、それを片手で抱きしめ返してくれて。


「じゃあ信じる!」


そう言ってチュって小さなキスをくれた。

髭つきのキスもだいぶ慣れてきて。

いつどんな時でも愛をくれる隆二とこうなれて本当に嬉しくて、浮かれていたのかもしれない…―――――

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