幼馴染





臣と二人で7組に入ってみんなに挨拶をする。

すぐにクラスのみんなが集まってきて会話は始まるものの、やっぱりいつも一緒だった奈々と隆二がいないここは少しだけ寂しいんだ。


「登坂くん部活何にするの?」


そうやって女子に囲まれることにすら慣れている。

臣も隆二も、昔から女受けする顔立ちだから黙っていてもいくらでも女の方から寄ってくるわけで。

だけどその想いであり告白を受け入れたことは過去一度もない。

そこにはいつだって奈々の存在があるのだから。


「おはよーさん」


ポンッて肩を叩かれて振り返ると、京都から引っ越してきた健二郎で。


「おはよー健ちゃん」

「またあいつ朝からモテとるんかいっ」


臣を顎でクイッて指して苦笑いの健二郎。

すごく話しやすくて何だかお兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな?って思う。


「健ちゃんも顔は綺麗なのにね?なんでだろね、この差…」

「いやいやそれ言わんといて!喋らん方がええわみたいなんやめてくれや」


困ったように苦笑いを飛ばす健二郎が可笑しくて笑ったらすぐに臣の視線が飛んできた。

健二郎を見て眉間にシワを寄せるなり、わたしの腕を引っ張って自分の方に引き寄せた。


「ゆきみ、俺のだから」


クラス内がザワザワして。

平気でそういう紛らわしいことを口にする臣。

そこにあるのは幼馴染みとしての友情で。

ここにいる人達にその愛が通じるわけがない。

だから今の今まで臣を囲んでいた女子達はジロりとわたしを刺すように見てきて。


「臣、それ違う!ただの幼馴染みだから!みんな誤解しないでね!」


わたしの言葉にみんなホッとしたような顔を飛ばす。


「何だよそれ。幼馴染みでもお前は俺のもんだろが」


まるでわたしのフォローを無視しやがった臣のせいで、またクラスの女子達から白い目で見られる。


「まぁまぁ、大事やってことやんな!」


健二郎の言葉に臣がほんの少し口角を上げて「そういうこと。お前たまにはいいこと言うじゃん」なんて、あくまで上から言ったんだ。

言われた健二郎は特に気にしてない様子で、そんな二人がちょっと羨ましかった。

男同士の友情って気持ちいいなーって。

そんな風に思って見てたら、目の前にひょこって顔が出てきて。


「ゆきみちゃん、おはよ!」


サラサラの茶髪と人懐っこい瞳。

子犬みたいなその顔をフニャッて崩して笑う岩ちゃんにわたしの心拍数が一気にあがった。





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