四つの星





「奈々と一緒がよかった…」


わたしの呟きに「おい」隣で低い声を出したのは幼馴染の一人、広臣…通称「臣」。

さもあり得ないって顔をわたしに向けているけどちっとも怖くない。


「なに、臣…」

「何じゃねぇって…。奈々はいねぇけど、俺がいんだろ…」


照れ隠しなのか、ポカンとわたしを軽く殴る臣。

その顔はムスっとしていて。

そんな臣を見て、同じく幼馴染の奈々と今市隆二こと、隆二も笑っていて。


「あたしもゆきみと一緒がよかったよ〜。隆二だけじゃ寂しいよ〜」

「俺も俺も!俺もゆきみがいないと寂しい…」


そう言ってチラリと臣の反応を見る。

大きな目を細くしてブスっ面の臣は「バーカ」って言って顔ごと逸らした。

ポンって隆二がわたしの頭を叩いて。

それだけで分かる、隆二が何をわたしに伝えたかったのか…。

わたしを見て微笑んでいる奈々も分かっている。

だから臣の大きな背中に後ろからギュっと抱きついて「臣と一緒で嬉しいよ」そう言ったんだ。

お腹に回ったわたしの手にそっと臣の温かい温もりが重なって。


「素直に最初から言えよな…」


ぶっきら棒な臣の声が届いた。

ヒラヒラと桜の木から風で散りゆく花びらがわたし達四人のこれからを物語っているかのように、二か所に別れて散っていく。

勿論誰もそんなことに気づくわけもなく。

そうやっていつものように会話をしながらクラスへと移動した。


「じゃあまた後で」


手前にある2組で足を止めた隆二と奈々に、そっけなくそう言う臣。


「臣、ゆきみ、またね」


奈々が小さく手を振って、そんな奈々の後ろで隆二も片手をあげて少し寂しそうにしていて。


「うん、また」


そう言って臣の後をついていくわたしが2、3歩歩いてから振り返ると、隆二の手が奈々の背中に回って教室へと誘導していた。

美男美女…そんな言葉が似合う二人。

トクン…と胸が鼓動をたてた。


「臣寂しい?」


ちゃんとわたしが追い付くのを待っててくれた臣は、愛情表現を表に出すのが得意じゃないものの、その気持ちは溢れていて。


「別に」

「素直じゃないんだから」

「素直だって」

「そう?」

「ああ」


わたしの肩に腕を回してポンポンって頭を叩く臣は…―――小さい頃からずっと奈々を見ている。

隆二もその気持ちは同じで。

だからお互い突っ込むことはないのだろうけど。

どっちかとくっついたらどっちかが傷つくことになる。

―――奈々はどうなんだろうか。





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