ごめんね、だいすき
【side ゆきみ】
―本当にごめん―
―あんなこともう絶対にしない―
―約束する―
―具合大丈夫?―
―心配…―
―俺のせいだよね…―
―でもそれでも俺ゆきみちゃんが好きだよ―
―…逢いたい―
―…一瞬でいいから顔が見たい―
鳴りやまない直人くんからのLINE。
昨日はそりゃ動揺したけど、きっとわたしも直人くんをそうさせちゃったんだって…それぐらいの自覚はあった。
相手が臣と隆二以外には通用しないであろう、わたし達の近い距離。
直人くんの醸し出す空気が二人に近かったから…だから。
―外見れる?―
夕方になって、雨は次第に強くなっていく。
雷を鳴らす空は真っ暗で、だから奈々が心配だった。
こんな天気予報ならわたしも学校に行くべきだったって後悔した。
だから早く奈々が帰ってきてくれないかって思っていたら、直人くんからそんなLINE。
「え、まさか…」
呟いた声にフリースを着てベランダに出た。
物凄い勢いで吹き込んでくる大雨。
それでももし直人くんがそこにいたら…そう思ったんだ。
ベランダの柵に掴まって下を見ると、そこには懐中電灯で直人くんを照らす直己くんの姿もあって。
透明傘にマジックで書いた「ごめんね」と「だいすき」の文字が目に入って…。
二人ともずぶ濡れなのに、わたしなんかの為に…
「許すから―――!!もう怒ってないからっ!もういいからっ!」
わたしが聞こえるか分からないけどベランダから大声で叫ぶと「ありがとうっ!」雷雨の中、直人くんの声が届いた。
「また明日ねっ!」
大きく手を振っている直人くんと、ずっとそんな直人くんを真っ暗な世界から照らしている直己くんに涙が出そうだった。
でも…――――「は、何してんだよっゆきみ!!」風の音で臣がわたしの部屋に入ってきたことなんて気づきもしないで…
ベランダでびしょ濡れのわたしを見てそのまま部屋に連れ戻された。
「何してんだよ〜ゆきみ…」
洗面所からバスタオルを持ってきてそれでわたしを吹いてくれる優しい臣。
でも…―――「臣、奈々と隆二は?」わたしの声にキョトンとしたのはむしろ臣の方で。
「え、来てねぇの?」
「…うん」
「何してんだ、あいつら…」
時計を見ると、とっくに学校は終わっている時間で。
だから臣もここに帰ってきていて。
部活を休んだであろう臣の帰宅よりも遅いなんて思いもしない訳で。
何となくドクンっと胸騒ぎがした。
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