隆二の告白




思わず怖くて繋がっている隆二の手を引く。


「隆二離して…」


すごい力であたしの腕を握っている隆二の手が、不意に緩くなった。

びしょ濡れの隆二とあたし。

濡れた髪からポタポタと滴が落ちていて、物凄い色気を感じる。

薄い唇を開いた隆二はあたしを見てそっと言ったんだ。


「しないよ俺は…」


悲しみを帯びた目であたしを見て。

それはたぶんキスのことで。

岩ちゃんみたいに無理やりされる…って、あたしがそんな顔をしていたのかもしれない。

だからそんな言葉を放ったんだろうか、隆二は。

ドクンと心臓がうごめいた。

動くことのできないあたしにバスタオルを被せてそのままバスタオルごと抱きしめる隆二。


「けど…嫉妬した。奈々を誰にも渡したくない…」


ギュっと強くあたしを閉じ込める隆二。


「好きだよ、奈々…」


土砂降りの雨にかき消されてしまいそうな、隆二の告白に胸が痛くて涙が溢れた。

隆二…その「好き」は岩ちゃんの言うLoveの好き?

それともLikeの好き?

どっちにしてもあたしが隆二を選んだのなら、臣はゆきみを選ぶんだって。

そしたらゆきみは幸せ?

ゆきみにだったら臣を任せられる…

あたしの中にいる臣への気持ちに気づかないフリをして、ただ隆二の温もりを感じていたんだ――――。




どのくらいの時が過ぎたんだろうか。


「ゆきみの様子見てくる…」

「うん。けど奈々、先に身体あっためろ。風邪引いてるゆきみんとこいくんだから奈々まで風邪貰ったら…」

「うん」

「…俺は後から行く。ゆきみも奈々と二人きりで話したいはず…」


隆二の言葉に顔を上げて見つめる。

あたしもずっとそう思っていたけど、隆二がそれに気づいているなんて思わなかったよ。

ゆきみと二人で話したいのに話せない環境なんてごめんで。

それをちゃんと分かってくれていた隆二は、やっぱりあたし達のことをちゃんと見ててくれているんだって嬉しかった。


「ありがと、隆二」


そう言って部屋に戻ったあたしはすぐに熱いシャワーを浴びてゆきみの部屋に顔を出したんだ。




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