どんより雲




あたし達のどんよりした気持ちは、窓の外に広がる大きな空にも影響しているのか…


「雨…」


お昼過ぎに真っ暗になった空は大粒の雨を降らせ始めたんだ。

さすがに今日はお昼を食べに来なかった岩ちゃん。

臣と隆二と3人で食べたあたし達。

直人くんとエリーも相当気まずかったんだろう、教室には残ってなくて。


「奈々…大丈夫?」


空を見つめるあたしの視界を遮るように隆二が小声でそう聞いた。


「雷…鳴らないよね?」

「…雷雨って天気予報言ってた気がする」


隆二の言葉に苦笑いしかできないあたし。

子供の頃から雷だけはすごい苦手で。

どうにも頭の中が真っ白になってしまうんだ。

どうか鳴らないで欲しい…―――――そう願ったあたしの気持ちなんて空には通じなくて。

6時間目の授業が終わる頃には空を大きく鳴らす雷の音。

最悪。

ゆきみが心配だから早く帰りたいのに、これじゃ足が竦んで動けないよ…。


「隆二お前どうする?」


だから授業が終わったらすぐにそう言いにきた臣は当たり前にサッカー部の為のジャージ姿で。


「奈々無理だから今日は奈々と一緒に帰るよ。臣は部活出てけよ」

「おう、悪いな。頼むよ奈々のこと。ゆきみんとこも、なるべく早く行ってやって」


あたしの前でそんな会話がされていて。


「臣は筋トレ?」

「だぶんな…。それか地獄の校内マラソン…」

「筋トレだといいね」

「ああ。隆二いてくれるから、素直に甘えろよ?」


クシャって臣の手があたしの髪に触れた。

大きな目を細めてそう言っていて。


「大丈夫だけど…子供じゃないし」


ムスっとしたあたしを見てフワって笑った臣は「じゃあな」そう言ってバッグを担ぐと部室の方へと消えて行った。

隆二と顔を見合わせて帰ろうとしたその時だった。


「あ―今市!お前今日日直だったよな、ちょっと手伝って欲しいことがあるから視聴覚室まで来てくれ!」


担任からの呼び出しだった。


「自分っすか?」

「そうだ、お前だよ今市!」


困ったようにあたしを見つめる隆二は眉毛を下げていて。


「先生、奈々も一緒にいいですか?」

「いや今市だけで十分だ!そんなにかかんないからすぐ来てくれ!」


先生が出て行っちゃって。


「大丈夫だって隆二!そんなにかからないって先生も。あたしここで待ってるから」

「…ごめん」


そう言って隆二は先生の後を追うように走って行った。

窓の外は真っ暗で、教室内にはあたし一人しか残っていない。




- 25 -


prev / next