温もりとアイス
【side ゆきみ】
直人くんと健二郎に挟まれて座った館内。
暗くなると直人くんが椅子に深く座ってほんの少しわたしに寄った。
勿論ながら健二郎は反対側の隣のエリーと仲良くポップコーンを食べていて。
「ゆきみちゃん」
不意に直人くんに名前を呼ばれて見ると、キュっと肘掛を通り越してわたしの手が握られた。
スキンシップなのかな?
別に臣だったり隆二だったりとこうして手を繋ぐことは珍しくなくて。
だから直人くんに対してもそんな気分だった。
暗闇で目が合ってニッコリ微笑むと「可愛い…」小さく呟いたんだ。
そうやって映画が始まった。
思いの外隣の直人くんは集中しているようで、シーンが変わる度に色んな感情でわたしの手を強弱をつけて握ってくる。
二人が出逢ってエレベーターの中でキスをするシーンでは、直人くんがゴクっと唾を飲み込む音がして、反対側の健二郎は身を乗り出して画面に釘付けで。
奇麗なシーンだなぁ〜って思ってキュンっとしながらわたしも見ていた。
――――――――――――
映画を観終わったわたし達。
「奈々も一緒に観たかったな、やっぱ…」
そう思ったけど、口に出すのはやめた。
直人くんはずっと手を握っていて。
色んな感想をわたしに伝えてくれる。
わたしと一緒に観て楽しかったんだって気持ちが伝わってきて、それはやっぱり嬉しくて。
「アイス食わねぇ?奢るよ!」
「アイス?」
「うん。このまま帰っちゃうの勿体ねぇ…もうちょっと二人でいたい…ダメ?」
ジッと静かにそう言ってわたしを見つめる直人くんは真剣で。
「うん」
小さく答えたらふわっと一瞬だけ抱きしめられた。
一緒についてきそうになった健二郎とエリーを逃げるように巻いて、わたし達はアイスクリーム屋さんに入った。
そこで初めて手を離したら、何となくその温もりが欲しくて…。
「直人くん、手…」
そう言って手を出したら「え?」キョトンとした顔で直人くんがわたしを凝視している。
「あ、俺…左で食う」
そう言って紅い顔で直人くんはカップに入ったアイスを左手で食べ始めた。
でもやっぱりこぼしちゃって…「食べさせてあげるよ」そう言ってスプーンの乗せたアイスを直人くんの口に運ぶと「やべぇ…」って声を漏らした。
「ゆきみちゃん俺結構いっぱいいっぱい…」
直人くんの言葉に首を傾げると、目の前にその顔を寄せたんだ――――――…
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