監視役




スッと直人くんの出した手を握りしめる。

それが吃驚な行為だったのか、つぶらな瞳を大きく見開いて、それから少し困ったようにフニャって笑う直人くん。


「理性が飛びそうよ、俺…」


そんな言葉をくれたんだ。

だから何かやっぱり直人くんが可愛くって。

その腕にクルリと身体を巻きつけて「飛んだらどうなっちゃうの?」なんて下から見つめあげたら思いっきり目を逸らされて。


「ゆきみちゃん小悪魔だなぁ〜マジで。心臓壊れそうだし俺…」


もっと知りたいと思ったんだ、直人くんのことを。


そうして映画館に着いたわたし達。

チケットを指定券に引き換えてポップコーンを買おうって列に並んでいたら近くから聞こえてくるのは関東じゃ珍しい関西弁で。

チラリと横を向いたわたしの目に飛び込んできたのは「健ちゃん!?」同時に隣の直人くんも「エリー!?」なんて素っ頓狂な声を出した。


「おお、何しとんっ!?」


わたしを見てそう言う健二郎だけど、隣のエリーが気まずそうに健二郎の腕を叩いていて。


「直人くんと映画観るのこれから」

「お前ら…邪魔しにきた訳じゃねぇだろな?」


ジロって直人くんが二人を疑いの目で見ていて。


「まさか!俺達も映画観るつもりで…」


エリーが持っているのは、まさかの「ロミオ&ジュリエット」のチケット。

直人くんの顔から笑顔が消えていく。


「広臣?隆二?どっちに言われた?」

「どどどっちでもないって!」


エリーが慌てて答えているのが可笑しくて。

健二郎に至ってはエリーの発言に任せているのか、それともポップコーンの味を真剣に悩んでいてわれ関せずなのかは分からないけど…。


「マジで信用ねぇのな、俺!」


そう叫んだ直人くんに「まぁ手繋いじゃってんねんしなぁ〜お前ら」…ピシャリと健二郎が言い放ったんだ。


「いやこれ同意のもとだし!」


ドヤ顔で直人くんはそれをアピールしているから「うん、同意のもとだよ!」って答えると、エリーが嬉しそうに笑った。


「直人優しいからさ…」


そう言ってポンってわたしの頭を撫でてくれて。


「まぁでも信用はないねんで、直ちゃん!しゃあない、一緒に観ようや」


健二郎の言葉にガックリと肩を落としたんだった。



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