わたしの犬
【side ゆきみ】
臣でも隆二でもない男子と二人で出掛けるなんて初めてで。
「んじゃ行こう」
わざわざ奥にある7組まで迎に来てくれた直人くんに着いて行った。
いつもは臣か隆二の後ろに乗る自転車も、背中の形から大きさ、香水までもが全部違っていて。
「直人くん」
「んー?」
「奈々と隆二、ちゃんとクラスに馴染んでる?」
「はは、優しいんだ、ゆきみちゃん。大丈夫俺ら仲良しだよ!エリーも混ざってよく喋ってる!」
「そっかよかった!」
「前に広臣が言ってた”付き合ってる”ってのは、恋人ってことじゃないんだよね?」
後ろにわたしを乗せたまま直人くんはそう聞いて。
わたしを好きだと言った直人くん。
岩ちゃんを気になり出していた矢先だった、この直人くんに守ってもらったのは。
何でか直人くんがスローモーションで見えて、わたしを守ってくれたその瞳が真剣でちょっとかっこいい…そう思ったんだ。
岩ちゃんが簡単に奈々への気持ちを認めたからかもしれない。
奈々に適うわけも勝てるわけもない。
だから心が勝手に諦めたのかもしれない。
そんな時の直人くんだったせいか、すんなりとわたしの中に入ってきて。
「うん。幼馴染みだよわたし達。でも臣と隆二より素敵な人にまだ出逢ったことないかも…」
「うひゃー!それ片岡直人って言わせてぇ!」
照れもせずに想いを伝えてくれるのは嬉しい。
臣も隆二もそういうことは奈々とわたしには沢山言ってくれる人だから。
少なからず心地よい言葉として受け止められる。
後ろから直人くんの髪をフワッて撫でると、ほんの一瞬身体を固まらせて、それから顔を上げてわたしを見上げる。
「ゆきみちゃん、俺に触って怒らんねぇ?あいつらに」
別に無意識で。
臣や隆二に触れるみたいに直人くんにも触れたんだ、わたしってば。
「直人くんなんか…犬みたい」
「はいっ!?犬っ!?俺っ!?え、もはや人間じゃない!?ペット!?」
あわあわしながらもしっかり自転車は漕いでくれる直人くんは、髪の毛がフワフワしているせいで見た目も犬っぽくて。
「うん、何か犬かも!直人くん!」
わたしが言うとちょうど駅に着いた所で、後ろから降りた。
自転車を止めた直人くんは、チラっとこっちを見て…
「噛み付くよ俺!」
そう言ってスっとわたしに手を差し出した。
この手を握ったらわたし、直人くんに噛み付かれる系?
それって許される系!?
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