1.新しい世界 (3/4)


少女が気が付くとそこは知らない場所だった。
見覚えのない全く知らない場所。
「(・・・ここは、どこ?)」
どうしてこんなところにいるのだろうか?自分は確か・・と思い出そうとするが
「(あれ?何をしていたんだってけ・・)」とまるで靄がかかったように上手く思い出せない。
どうにか少しでも思い出そうとした時だった。
「キガツキマシタカ?」と誰かの声がした。
その声がした方を見るとそこにはフヨフヨと浮いているロボットの姿があった。
「えっ・・?」と少女が驚くのをよそにそのロボットは「ヨウコソ コンパスヘ」という。
その言葉に少女はますます訳が分からなくなる。
知らない場所に加えてフヨフヨと浮いて喋るロボット
これは全部夢なのではないか?と思いながら自分の頬をつねる。
すると夢ならば痛くないはずの頬がじんじんといたい。
その痛みが『夢ではなく、現実だよ』と少女に教える。
「訳・・・分からない」
どうして自分がこんな所にいるのか、そもそもここがどんな場所なのか、それら全て分からない。
そんな事を思っているとふと、ロボットが「ワタシガ ソノリユウヲオシエマショウ」と言う。
その言葉に少女は「本当ですか・・?」と聞く。
「ハイ マズハシッカリト コノセカイノコトヲ シッテモラワナイトイケマセンカラ」
「はぁ・・」
「デモ ソノマエニ ジコショウカイヲシタホウガ ヨロシイデスネ」
そう言うとロボットはぺこりとお辞儀をすると「ワタシハ コノコンパスノカンリニン Voidollトモウシマス イゴ ヨロシクオネガイイタシマス」と言った。
少女はそれを見て自分も自己紹介をした方がいいかと、「私は・・」と名前を言おうとしてすぐ口を閉じてしまう。
なぜか分からないが名前を言いたくないと思ってしまったのだ
それはVoidollを少し信用していないのもある・・・。がそれともう一つ、自分の名前を言ってしまえば自分にとって辛くて苦しいものを思い出してしまいそうで。
とは言うものの、名前を言わないなんて絶対に怪しまれてしまう。それに相手が自己紹介をしたのに自分がしないのは失礼すぎる。
だが少女の思いとは裏腹に口はいまだに開けずにいる。
するとそんな少女の様子に気づいたVoidollは何かを察したのか「カナラズシモ "ホンミョウ"ヲイワナクテモ カマイマセンヨ」と言う。
少女はその言葉にドキッとするが今はそう言ってもらえて少しだけ安心した。
そして少女は少し深呼吸をすると、ゆっくりと口を開いて「・・・ノアです」と言う。
Voidollはそれを聞くと「ノアサンデスネ、リョウカイシマシタ」と言ってパッと画面の様なものを出した。
その画面になれたように触れるとポチポチと何かを入力している
それが終わると「デハ ジコショウカイモオワッタコトデスシ アラタメテ コノセカイ・・コンパスノコトヲオシエマショウ」と言った。
ノアはその言葉に頷く。
「よ、よろしくお願いします」
少しでも分からないことが減るように、この世界の事が分かるように、そう思いながら。

「・・・イジョウデセツメイハオワリマスガ・・シツモンハアリマスカ?」
「少し待ってください・・整理が追い付いていないです」
ノアはそう言って額を手で押さえる。
予想よりも大きかった+多かった情報に頭が追い付かず整理すらできていない。
とりあえず、Voidollの説明をまとめると

・ノアがこのコンパスの世界にいるのはVoidollが連れてきたから。

・この世界ではノアは『ヒーロー』というものとしてアリーナと言う場所で戦うという。

・ヒーローにはアタッカー、ガンナー、スプリンター、タンクの種類がありノアはその中でアタッカーであるということ。

・またヒーローはノア以外にも何人かいるため、そのヒーロー達と協力して戦うこと。

と・・いくつかの情報を整理して見ると、まるで夢かゲームの世界の話のように思えてきた。
とはいっても、これはれっきとした現実と言うのは分かって入るのだが・・。
「(とりあえず少し整理できたけど・・質問したい事が多すぎる・・!)」
質問したいことは、なぜ自分をこの世界に連れてきたのか、そもそもヒーローとして戦うとはどういうことなのか?
アリーナとはどんな場所なのか・・・と考えれば考えるほどキリがないし一気に聞いては失礼だと思いノアは一つだけ・・一番気になる事だけを聞く。
「・・どうして、Voidollさんは私をこの世界に連れてきたんですか?」
それを聞いたVoidollはジッとノアを見るとただ一言
「アナタガ コノセカイ二クルシカクガ アッタカラデスヨ」と言った。
それを聞いてノアは首を傾げる。
資格とは何なのか?質問をした事によってもっと分からなくなったとしか思えない。
?マークでいっぱいなノアをよそにVoidollは「デハ ソロソロ イキマショウ」と言って移動し始める。
「・・行くってどこにですか?」
「アナタイガイノヒーロータチガスンデイル・・ソウデスネ、ワカリヤスクイエバシェアハウスノヨウナ トコロダトオモッテクダサイ」
「・・・はぁ」
他のヒーロー達はどこにいるのかと気になっていたが、なるほどそう言う場所にいるのかと納得した。
この世界で暮らすにはその方が色々と安全なのだろう。
そんな事を考えているノアに
「アァ ソウダ」
ふと、Voidollが何かを思い出したのか、再び画面の様なものを出すとポチポチと何か入力をする。
すると、突然パッとノアの目の前に薙刀らしきものが現れる。
それを恐る恐る手に取る。少し重いが持てないと言うほどの重さではない。
「ソレガ ノアサンノヒーロートシテノブキデス チャントツカイコナシテクダサイネ」
「・・あの、私・・薙刀、というか武器なんて遣ったこと・・ないです」
「・・・ソノウチ ナレマスヨ」
「・・だと、いいのですが」
そんな事を話しながら歩いていると、前の方に建物が見える。
「(あれが、他のヒーローの人たちが住んでいる所か・・)」
一体どんな人たちがいるのだろうか、怖い人がいなければいい・・もしいたら落ち着けないまま生活をする事になる。
それだけは勘弁してほしい、と思いながらノアはドアの前まで歩く。
「ドウゾハイッテクダサイ」
Voidollの言葉にノアは頷くと、ドアノブに手をかけてゆっくりとドアを開けた。

そして、この日からノアのコンパスの世界での人生が始まった。








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