騒がしい日々

残された道は現実逃避の続編
読んでいない方は先にそちらを読んでください。

(モヒカン受け/総受け?)












『どうだ、そっちの学校は? 変な奴とかに絡まれてないか?』

 蓮の言葉に、大丈夫だと返す。絡まれてはいないが、初対面の奴にキスをされてしまった。……つっても、そいつは俺のことを知っているらしいが。
 男に転校初日にキスをされてしまったなんて言えば、馬鹿にされるのは目に見えている。絶対言わねぇ。

「つか、いつまでこの髪型でいなきゃいけねえんだよ」
『いつまでも』
「ふざけんな」
『で、周りの反応どうだった?』

 電話口からでもニヤニヤとした表情をしていることが分かる。ハアと溜息を吐くと、ベッドの上で寝返りを打った。

「凄い目立ったけど、まあ、友達はできたぜ」

 どうだ、と笑いながら言うが、蓮からの反応がない。呼びかけても何も聞こえず、電波が悪いのかと首を傾げた時。

『――あ゛?』

 低く、怖い声にびくりと震える。何が気に障ったのかが全然分からなくて、少し焦った。

「な、何だよ」
『友達だと…?』
「あ、ああ…」

 そこに怒ってんの!? 何故!?
 お前は俺を孤立させたいのかよと顔を顰めると、舌打ちが聞こえた。そして爆弾を投入。

『明日そっちに行くから』

 くっ、来んな――!
 俺が言うより先に通話を切られた所為で、虚しい叫びが部屋に響いた。












「おはよー」
「……はよ」
「お、どうしたどうした? 元気ないじゃん」

 爽やかに登校してきた更木に、机にべったりと左頬をつけたままげんなりと挨拶をすると、不思議そうに俺を見た。憂鬱だ。隣が大石っていうのも更に俺から元気を奪う。
 体を起こし、まだ空席の隣をちらりと見ると、更木が苦笑した。

「大石、今日来るかな」
「どういうことだ?」
「大石って基本的にサボり魔だからさ。滅多に教室に現れないんだよ」

 ふーんと返し、心の中でホッと息を吐いた。それなら安心だ。一発殴りたいけど、俺は心が広いから犬に噛まれたと思ってあのキスのことは水に流しておいてやろう。

「更木」
「ん?」
「宿題写させて」
「いいけど、またかよー」

 いい加減ちゃんとやれって。更木は話しかけてきた無表情の男に苦笑を向ける。しかし、適当にあしらっている。
 こいつ、確か昨日も表情変わってなかったぞ。
 じいっと見ると、真っ黒な瞳がこっちを向いた。吸い込まれそうな黒に、少し顔が強張る。

「……俺、梅原。宜しく」
「え、お、おう。俺は瀧口だ」
「うん。……その髪型さぁ…」

 だから髪型のことは放って置いてくれよ。

「いいね、凄くいい。面白いよ」
「へ…?」

 え、な、なんだって?

「こいつこう見えてお笑い好きなんだよ」

 それならもうちょっと面白そうな顔をしろ。……いや、ていうかこの髪型ウケ狙いじゃねぇから! 

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