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 席に座ると、東山が連絡事項を述べているにも係わらず爽やか男がにこにこと胡散臭い笑みを浮かべながら話しかけてきた。こう言う奴って、馬鹿か裏のある奴しかいないよな、とすっきりした顔立ちを見つめながらぼんやり考える。

「俺、更木深智っていうんだ。好きなように呼んで。ま、宜しく!」
「おう」
「その髪型似合ってるな」

 髪型に触れるんじゃねぇ。そう思いながら、東山に言われた言葉を思い出し、どうも、と一言返す。意外そうに目を丸くした後、更に笑みを深くして顔を少し近づけてきた。

「前からその髪型だったの?」
「いや、色々あって無理矢理」
「色々? 訊いても大丈夫?」
「まあ大した理由じゃないし別に。ただ賭けに負けた。それだけ」
「おいおい、賭けって…」

 苦笑してはいるが、止めろとは言わないようだ。ズカズカと人の領域に入るような真似はしない奴らしい。
 更木は顔をずい、と一気に近づけると、こっそり声をかけた。

「――で、何で大石は瀧口をガン見してるわけ?」

 俺が知りたいぜそれは…。












 何事もなく一日が終わり(一つだけ問題を挙げるとすれば、隣のリーゼント――大石というらしい――からのしつこい視線だ)、俺が無害だと分かったクラスメイトは少し怯えながらも話しかけてきた。隣に更木がいることもあって、話は結構広がり、割と打ち解けれたと思う。

「じゃあな!」

 スポーツ飲料のCMに出てそうな爽やかな笑みを残して更木が教室を出て行き、それを追う様に教室に残っていた奴らも出て行く。俺も、と続こうとした時、左手を掴まれた。誰に、って、左には奴一人しかいないのだから答えは出ている。

「んだよ」

 振り返って睨むと、腕を振り払う。特に気にした風でもない奴は、一度手を見て、顔を上げた。

「やっぱり、お前だったか」
「はあ?」

 意味不明の第一声。眉を顰めて不快感を表すがやはり無表情。それにどこか懐かしみを覚えて、良く分からない感覚になった。

「昔、お前とは良く遊んでいた」
「……え、マジで? 気のせいじゃねぇの」

 だって俺転勤族で色んなとこ転校したから、と言うと、確信を持った表情で頷かれた。……リーゼントがインパクト強すぎて普通の髪型とか何も浮かばねえよ。ていうか何でこいつは俺のことを分かったんだ。そして昔っていつの話だよ。
 多くの疑問が浮かび上がったが、無表情が崩れて小さな笑みを浮かべるので、俺は出かかった言葉を全て飲み込み、見惚れてしまった。

「大石巽。宜しく」

 教室をその声が占めた。俺は金縛りのように体を固まらせて、気がついたときには目の前に大石の顔。え、と思ったときには柔らかい物が俺の唇にくっついていた――。


fin.


とりあえずこの話はここで終わりです!
もう次の話も構成は考えているので書きます。
この話には出てこなかったクラスメイトの話もそのうち。

不良+モヒカンという魅力を最大限引き出して書くことができなかったことだけが心残りです。
あと東山先生に頭をガシガシ撫でてほしい!と思ったら無理だったって言う…。モヒカン崩れるやん…(´・ω・`)

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