それ故に、彼は【SIDE:R&M】

それ故に、彼は【SIDE:M】続編/龍太郎視点と原西視点ごちゃまぜ





「…マジで?」

 目が覚めると自分の部屋だった。何だか懐かしさを覚える自分の体や部屋に、不覚にも泣きそうになった。感極まってベッドの枕元にあるテディベアを力いっぱい抱き締めた。俺は急いで元希に電話をかける。

『はーい、もしもーし』

 咲だと思ってんだろうな。おかしくて笑みが零れる。

「元希」
『……りゅーたろ?』

 ああ、と答えると急いた声ですぐに行くと言われ、電話が切れた。マイペースな元希の慌てた声が珍しくて気分が良くなった。
 それにしても。どうしていきなり戻ったんだろうか? 俺が今こうしているということは、咲も戻っているだろう。原西の喜ぶ姿が目に浮かぶ。あいつは学校で会沢や高村に絡まれそうになったら庇ってくれたから、これからは更に咲を守るだろう。俺に優しい顔をしていたのも、甘味巡りに付き合ってくれたのも、俺が咲だったからだ。だからなんだという話だが、なんだか妙に腹立たしく感じる。きっと、この俺が女として扱われたからだろう。
 とりあえず、何で戻ったかとか原西のこととか考えるのは後だ。学校へ行く用意をしないとな。咲として学校に行っていたから久しぶりって感覚はないしサボりたいが、咲は数学がある時以外学校に行ってなかったんだ。そろそろ行かないと出席がヤバい。
 自室を出ると、お袋と姉貴が朝飯を食っていた。俺を見ると、二人が挨拶してくる。

「…おはよ」

 長い旅行から帰って来たみたいな、この安心感はなんだろう。俺がホームシックになったとでも言うのか。

「あんた、そんなところで突っ立ってどうしたの?」
「え、ああ、いや、別に」

 姉貴の横に座ると、じっと見つめてきた。

「あんた最近妙に大人しかったっていうかなよなよしかったけど今日はいつもの龍だね」

 ぎくりとする。そりゃ、咲は女だからな。

「そうか? まあ、ちょっといろいろあってな」
「ふーん? まあいいけどね。今日は学校行くの?」
「行く。姉貴は今日講義あるわけ?」
「お昼からね」

 パンを黙々と食べていたお袋がお皿を持って立ち上がり、訊ねて来た。「龍くんもパンでいい?」それに頷くと、お袋は台所へ行く。久しぶりの我が家での食事だ。少し浮かれていた。食べている間に元希が来るかと思ったが、ゆっくり朝食を堪能しても奴はまだ来なかった。


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