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俺はこいつと友達にないたいのか…? 自分で自分が分からない。なんでこんなやつと。
「…別に、ただ気になっただけだ。ま、いねえだろうがな」
「まあな」
あっさり答えられ、反応が遅れた。奴の視線はパフェに注がれていて、むっとする。適当に流された。
「モテねぇだろ?」
「ああ」
「おい、こっち向けよ」
「ああ? なんだよ、ちゃんと答えてんだろ」
漸く顔が上がり、こっちを見た。俺は胡乱な目で本当に? と訊く。
「本当だけど? モテねえし彼女もいない」
「…ふーん」
嘘は言ってなさそうだ。クラスの女子対する態度やこの発言からすると、女に興味があまりないのかもしれない。ま、だからどうしたって感じだけど…。
「…それ、そんな旨いか?」
暇なので頬杖を付きながら訊ねると、即答された。「旨い」まあ、こんなに旨そうに食べてるしな…。俺、においだけで胸やけしそう。
「お前、一口要る?」
「はっ?」
「すげえ見てるから欲しいのかと」
ほらよ、とスプーンを向けられ、硬直する。こ、これは所謂…あーんというやつじゃないのか。つーか間接キス…。そこまで考えて、はっとする。何を考えてるんだ俺は。見た目が咲だからそういうのを気にしてしまうのかもしれないが、こいつは男だ! しっかりしろ!
「…原西? 要らねえのか」
眉を顰めた田中がスプーンを引っ込めそうだったので、慌ててスプーンを口に含む。甘いのが口いっぱいに広がり、何で俺食べたんだろうと自分の行動に疑問を持った。理由を考えたくないので咲にあーんされるというシチュエーションを体験したかったということにしておこう。
「甘すぎ…」
「そうか? お前味覚おかしいんじゃねえの?」
「その台詞そっくりそのままお前に返す」
一口で胸焼けしそうだ。それをコーヒーも飲まずにパクパク食べ進めているこいつの方が絶対おかしい。
それから俺は、田中がパフェを完食するまで、その姿を見つめていた。
それから一週間。咲は田中の姿のままだった。俺と田中は特に仲が良くなるわけではなく、だらだらと日々を過ごしていた。そしてある日、事件が起こった。田中がいつもより家を出てくるのが遅くて、イライラとしながら待っていた時のことだ。田中が出てきて、文句を言おうとした。しかし。
「……学くん」
「…え?」
田中からは学校以外で呼ばれない呼び方。周りに人がいる時だけの大人しめの声。
「た、田中…?」
「私、咲だよ」
田中じゃない。咲だ。じゃあ、田中は……。ここにいない、と感じた時俺は確かに喪失感を感じた。
fin...?
もうちょっとこの状態を続けたかったんですけど、長くなりそうだったので。
以下、登場人物紹介です。
田中 龍太郎(たなか りゅうたろう)
甘い物を食べている時は雰囲気が柔らかい。
少し原西に心を許していた…?
原西 学(はらにし まなぶ)
龍太郎のギャップにやられた模様。
咲が好きだったけど、龍太郎も気になる存在に。
まだ気持ちは自覚していない。
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