ある日の吉本

CAGE-OPEN-の吉本ルートネタバレ注意。
ALIEN AUTOPSYのED後です。
















ゆめを みた 。
おれが なぐったやつ、おれが けったやつ 。
おれが ころしたやつ 。
おれが あいした かわいそうなポチ 。
そいつら みんなが いうんだ 。
許さない って 。










 ――異様な吐き気を感じて目を開けると、ぐっしょり汗を掻いていたことに気付いた。真っ白な服。真っ白な天井。俺は自分の両手を見て長い息を吐いた。赤黒い血がこびり付いたように見える。実際、何人も殺めたので消えない血の痕で一杯だと思う。
 人の気配を感じて、さっと身構える。看護師が見回りに来たんだろう。
 ノックの後、ドアが開かれる。

「あら、起きたのね――顔色が悪いようだけど、何かあった?」
「いや」

 俺は首を振った。

「昔の、夢を見ていただけじゃ」
「……そう」

 看護師は悟ったようで、何も言わなかった。俺も、それ以上何も口にしなかった。かちりと時計の針が鳴って、俺は欠伸をしながらベッドに横たわる。髪がボサボサだと看護師に笑われた。

「そういえば、もうすぐ紺野くんが来る時間だけど」
「なぬっ」

 飛び起きた。確かに紺野が面会に来る時間。俺はささっとベッドを降りる。

「時間はちゃんと守るのよ」

 了解の返事代わりに手を上げた。そのまま部屋を飛び出す。ここから面会室は遠くない。逸る気持ちを抑えながら手続きをすませた。
 紺野。こんの。会いたい。早く会いたい。












「紺野!」
「おわっ。びっくりした。いつも飛びつくなって言ってるだろ!」

 無視してぎゅーっと抱きしめていると、諦めたような溜息。ふふんと笑い声を上げた。

「…って、お前、今日は髪がボサボサだな。それに…顔色が悪い。何かあったか?」

 ふむ。何故気づくのか。あの看護師も、紺野も。不思議じゃのう。

「おーい、聞いてるか」
「聞いておる。無視しただけじゃ」
「おい」

 …あの夢に、紺野は出てきただろうか。紺野も、いつかは離れていくだろうか。そんなことを考えて、ありえないと首を振る。あんな夢を見たせいで、少し感傷的になっているらしい。馬鹿馬鹿しいしキャラではない。やめよう。

「おのれは暖かいのう」
「…おう」

 紺野が俺の背中に手を回す。ゆっくりと撫でられて、目を細めた。

「吉本も暖かいよ」
「む。そうなのか」
「そうだよ。俺と、皆と同じだ」
「そうなのか」
「そうだよ」

 そうか。同じか。この体温が、俺にもあるのか。
 ぎゅっと力強く抱きしめる。痛いと言われたような気がするが聞こえない振りをした。
 もし俺が一生病気のままでも。

「紺野」
「ん?」
「ヤリたい」
「は!? えっ、ちょ、ここ病院、ちょ、待て、どこ触ってんだおい吉本おおおおおおお」

 ――紺野がいてくれればそれで、俺は幸せなんだ。









fin.

吉本のEDはどれも好きです。


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