▼ 嫉妬
ネタバレ有り
今日介×歩人
「水見さん」
声をかけると、端正な顔が俺に向けられ、それは綻んだ。
「どうしたんだい?」
「いえ、探索に協力して欲しいなと思って…」
「おい歩人、何で俺じゃなくてそいつなんだよ」
「だって大人だし…頼りになるだろ」
「はあ? そいつ怪しいじゃねぇか。何かあったらどうするんだよ。俺にしとけ」
「酷い言われようだな。別に何もしないよ」
水見さんは苦笑して突っかかって来た今日介を見る。確かに水見さんは猥褻カメラマンだけど、それは女性に対してであって男の俺には関係のないことだ。何で今日介はこんなにもこの人を邪険にするんだろうか。少なくとも大人の男の人の中では一番背も高いし頼りになる。黒江さんはまだしも、あの教授の発言や笑みは胡散臭いことこの上ないし。女性は論外。危ない目になんて遭わせられない。音樹さんもあんな目に遭ったし、自分の罪を一番感じているのも彼女自身だ。今はそっとしておいた方がいい気がする。
そりゃ今日介を連れて行きたいのは山々だけど、今日介は葉子ちゃんや寧を守っておいてほしい。何があるか分からないのだ。それに好きな子にアタックするチャンスだ。吊り橋効果でも何でもいいから意識してもらえるように頑張れよ。
――と思っているんだけど。
「お前は絶対駄目だ!」
水見さんに牙を向いている今日介に溜息を吐く。俺のことを心配してくれてるのは凄い嬉しいんだけど、お前、…空気読めよなぁ…。俺の気遣い台無しじゃん。
二人から視線を外してぼおっと上を見上げている満さんを見た。
「何してんだ?」
「え、あぁ、大分下まで来たな、って思ってたんだ」
ずり落ちた眼鏡をくいっと上げる姿はインテリに見えないこともないが、体格が体格なので何とも言えない。
「歩人くんは今からまた探索かい?」
「まあ。一応水見さんを誘ってみたんだけど、あの状態だからなぁ」
はは、と呆れた笑みを漏らす。ああなるほどと頷いた満さんは笑った。会ったときのようなズボラさは見当たらない。頑張るよと言った言葉は本当のようだ。
「あの吠えてる奴、君の友達だったよね。本当に歩人くんが好きなんだなぁ」
「……はぁ? 嫌われてはないと思うけど…」
「見てて直ぐ分かるよぉ。今だって歩人くんがあの背が高い奴に声掛けたから嫉妬してるし」
「はぁ……え、嫉妬?」
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