夏・火曜日




数日前…

「友情と恋愛の境界線って、何だ」

「…は?」

「仲いい友達同士から恋人になることってあるだろ」

「……」

「まったくそういう対象じゃなかったはずなのに、気になって仕方ないのって、やっぱり恋?」

「誰か好きなヤツでもできたんか」

「好きっつーか、まぁ好きなのには違いないんだけど、どういう『好き』なのかなーと」

「なんじゃ、恋愛かどうかもわからんのか」

「わかんねぇ」

「友達なのか?相手は」

「おう。すんげぇ仲良いヤツ」

「じゃあ付き合えばよか」

「そうもいかねーんだよ。俺もまだよくわかってねぇし」

「付き合ってみて、違ったら別れればええじゃろ」

「んな酷いことできねーし。ていうかそんな軽いことできるヤツじゃねー」

「大事にしとるんか」

「まぁな」

「そんなに大事で気になるなら、『恋』でいい気がするけぇ」

「すんごく気が合う『大親友』かもしんねーじゃん」

「なんじゃそりゃ」

「大親友なのか、恋人なのか。どっちに向かってんのか……わかんねぇ」

「相手はどうなんか?」

「あいつ?」

「どいつか知らんけど、あっちはブン太のこと、好きなのか」

「めちゃくちゃ好かれてるけどな。あいつ、俺しか見てねぇし」

「……相手は『恋』なのか」

「それも微妙なんだよな。確かにアイツは俺のこと好きすぎるけど、普通に考えれば友情なんだろうし」




「性欲」

「は?」



「やれる相手か、そうでないか」

「はぁ」

「一種の基準じゃろ」

「お前らしいっちゃらしいけどよ」

「けど、ヤルからって全てが恋愛なワケじゃなか」

「サイテーなやつだな、相変わらず」

「お前も似たようなモンじゃけぇ」

「それが、最近はそうでもねーんだよな」

「遊んでないのか?」

「声かけられりゃついてくけどさ」

「同じだろ」

「そーれーが、この前びっくりしたんだけどさ」

「駅前でナンパされたお姉サン?」

「そうそう。オネーサンの家でイタしたのはいーんだけど」

「お前もやることやってるけん」

「とりあえず聞け。なんかさー、ヤってるときに中々イケなくてさー」

「ま、そういうこともあるけぇ」

「そーじゃねーんだよ」

「……」

「綺麗なオネーサンなんだけどさ、チラっちらとアイツのことが浮かんできて」

「気になってる『大事なやつ』?」

「あぁ。抱いてるのがアイツだったら、どう反応するかなーとか」

「…紛れもなく『恋』だろ、それ」

「やっぱりそうかなー」

「最中に他のヤツのこと考えてるなら、どうみてもそっちのヤツの方が好きじゃけぇ」

「オネーサンじゃなくてアイツの顔思い浮かべちゃって」

「……」

「中々イケなかったのに、アイツのエロいとこ想像したら、あっという間だった。アイツのそんな顔見たことねーのにさ」

「お前、そいつんこと好きだろ。恋愛な意味で」

「うーん、やっぱそうか〜」

「相手は?お前のこと、そういう意味で見てくれそうなんか?」

「わっかんねぇな〜。つーかそれ以前のハードルが、あいつにとってどーなのかも不明だし」

「ハードル?」

「俺は気にしねぇし、リベラルだけどさ」

「リベラル…」

「なぁ、普通の男子高校生って、男に告白されてどう思うかな」




「……」




「まぁ、確かに俺も男に告られても困るけどさ。でも、一般的には気持ち悪いってなるモンかなー」

「…相手は同い年か?」

「おう」





「……ちなみに他校の氷帝生か?」

「わかってんじゃん」






「………まぁ、大丈夫じゃろ」

「そっかなぁ」

「どこからどうみても、お前のこと大好きじゃけぇ」

「まーそうだけどよ。でも、あいつそういう面はまるっきしだからなー。童貞だし」

「この際、芥川が童貞云々は関係なか。やつの価値観、恋愛観、倫理観の問題じゃけん」

「ジロくん、どうなんかなぁ〜」

「試してみればよか」

「試す?」

「ボディタッチ。感覚でわかるだろ。いけるかダメか」

「まぁ、オネーサン相手ならそうだけどさ」

「一緒だ」

「そんなもんかねぇ〜って、仁王、お前、まさか男とシタことあんのかよ?」

「プピーナ」

「なぁ、おい」

「秘密じゃけん」

「えぇ〜?教えろよー。俺とお前の仲だろい」

「さぁ、どうかの」

「ちぇ。ま、いーや。次の月曜、ジロくんと遊ぶから、トライしてみっか」

「ま、頑張りんしゃい」

「おう!」




そして火曜日


「なんじゃ急に呼び出して」

「なぁなぁ、俺、ジロくんとやった!」

「ぶっ!」

「最後まではしてねぇけどさ」

「…そうか」

「俺、わかったわ」

「…何が?」

「やっぱり俺、ジロくんのこと好きだ」

「……」

「ジロくんの躊躇なく触れたし、可愛かったし、すんげぇ楽しかった」

「……」

「もっとさわりたくて、続きもしたかったんだけど、アイツ泣いちゃってさ」

「……」

「さすがに泣いてるヤツに最後までできねぇだろ」

「……ちなみにそれは同意のもとか?」

「あったりまえだろい」

「本当に?」

「なんだよ」

「芥川、泣いたんじゃろ?」

「……同意っつーか、拒否しなかったっつーか」

「ブン太。それは同意とは言わん」

「でも、ちゃんと言ったし!嫌なら突き飛ばせって」

「で、突き飛ばさなかった、と」

「うん」

「…かといってそれが同意でも無いだろ」

「無理やりでもねーもん」

「……で、告白は成功したのか」

「う〜ん、どうかなー」

「は?」

「あいつも俺のこと、そういう意味で好きだなーとは思ったけど、ちゃんと言われてねぇし」

「……お前、月曜何してたんだ」

「ジロくん家で遊んだ」

「だけじゃなかろ」

「ジロくん触って、いじって、イカせて、それでやっぱりジロくんのこと好きだってわかったから、告白」

「……順番が違うけん」

「最後までしようか迷ったけど、あいつがすんごく恐がったから、とりあえず手だけ」

「は?」

「ジロくんを弄り倒して、イカせるだけイカせたら、泣かれた」

「……」

「で、すぐ寝ちゃったから、とりあえず一緒に昼寝して帰った」

「……そこまでの間に、芥川の答えは無かったんか」

「俺も家に帰ってから気づいたんだけど、そういや告白の答え、もらってねぇやって」

「………」

「やっぱちゃんと言って欲しいしなー。メールや電話じゃ何だし。
明日は家族で御殿場アウトレット行くからなー。よし、木曜もういっかい、ジロくんとこ行ってみる!」

「……そうか」

「結果は追って報告する」

「別に休み明けでよか」

「まーそう言うなって。相談のってもらったしさー」

「(…ブン太が一方的に喋ってるだけな)」




「じゃ、楽しみにしてろよー」

「勝算は?」

「200%!!」

「…ほーか」

「あいつぜってぇ、俺のこと好きだし」

「ソウイウ意味で?」

「間違いねぇ。俺の直感がそう言っている」

「…まぁ、頑張ってこい」

「おう。じゃ、また連絡するから」

「……ああ」





「木曜に会うってことは、金曜か土曜にノロけられるんか……誰か捕まえられんかの。
柳生―――は家族旅行でフランスか。いつ帰ってくるんだったか…」






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