冬・12月26日
「クソクソ、負けた!」
「いっえ〜い、岳人の負け〜。いってらっしゃ〜い」
「7プレミアムのえび煎餅とおにぎり適当に。あとミントアイスと炭酸水買うてきてや」
「からあげくんレッドとファミチキ、ついでにきなこラテ!」
「あぁ?!コンビニ3軒にエクセまで行けってか?つーかジロー、揚げモンならからあげ棒でいいだろーが」
「え〜?ヤダ〜。からあげくんがいいんだC」
「じゃあファミチキ無し!ローソンならからあげくんと黄金チキンでいーだろ?」
「ヤダ。からあげくんとファミチキは違うジャンルだもん」
「じゃあ侑士!」
「7プレミアムは譲らんで」
「くっ…」
「ジャンケン負けたんだから、しょーがないじゃん」
「せやな〜。岳人もジャンケンする前はサーティワンのアイスとミニストップのフライドチキン言うてたしなぁ」
「…クソ、場所バラバラじゃねーか」
「ローソンとファミマは近いよ〜?」
「じゃあきなこラテはいらねーんだな?」
「誰もそんなこと言ってないC。エクセもちゃんと行ってきてよ」
「7イレブンもな。サーティワンの隣やし、ちょうどええやろ」
「駅前!遠い!!」
「「いってらっしゃ〜い」」
「お前ら、覚えてろよ!」
「もうじき宍戸と滝も来るから、早く帰ってきてね」
「アイツらくる前に、俺らも昼飯終わらせんとやしなぁ」
「じゃあ亮と滝に買出し頼めっての!」
「ジャンケンしよーって言ったの、岳人だC」
「言いだしっぺで負けたんやし」
「くっそ……ジロー。お前の昼飯、からあげだけでいーのかよ」
「いいよ〜」
「よくねーだろ!ちゃんとしたもんを食え」
「じゃあ岳人に任せる〜。適当に買ってきて」
「……わかった、行ってくる」
「いってらっしゃ〜い」
「岳人戻ってくるまで休憩にしよか」
「そだね。半分くらい終わった?」
「俺は殆ど終わってるけどな」
「あ、ほんとだ。忍足、早ぇ〜し」
「お前らが喋りすぎやねん」
「岳人だよ〜オレは一応、手動かしてるもん」
「どれ……岳人、アカンやん。数学全然やで」
「オレ、数学はもうちょいで終わる」
「ジローも。得意の数学はええけど、国語が白紙やん」
「たっきーの写すからいい」
「ちょっとは自分でやった方がええんちゃう?」
「岳人だってどーせ数学、オレの丸写しだもん」
「…せやなぁ」
「それよりも読書感想文!」
「なんや小学生の宿題みたいやなぁ」
「ねー。他の学校じゃ高校で読書感想文なんて無いっしょー」
「けど、一応ジャンルは指定されてるから、独特といえばそうやんな」
「まじまじ、やだ……なんで古典漢文から選ばなきゃなんねーの」
「ちゃんと借りたんか?」
「借りたよ〜。冬休みに学校の図書館行きたくないし〜」
「さよか」
「ひよに選んでもらった」
「日吉?」
「うん。岳人と図書館行ったら日吉がいてさ。オレらよくわかんねーから日吉に題材選んでもらった」
「後輩にか…」
「だいたいのあらすじも教えてもらったから、読まなくてもいけそう」
「ほな忘れる前に、それ先にやった方がええんちゃうん?」
「あ、そだね。岳人戻ってきたら感想文やろーっと」
「今やらんの?」
「今は休憩なんだC」
「そうか」
「はぁ〜まじまじ、宿題やだなー。感想文なんてやらないって丸井くんも言ってたのに〜」
「丸井?」
「立海はそういう宿題ないって。氷帝だけなのかなぁ」
「丸井も宿題1日で片すんやったか」
「明日ね。柳んちで集まるんだって」
「そういえば柳が立海で学年トップか」
「すっげぇよね。柳と柳生がトップ3に入って、幸村くんと仁王も30位以内だって」
「仁王?意外なヤツが頭ええやん」
「授業出てない時も多いらしーんだけど、テストはいいって言ってた」
「お前みたいなモンか」
「ぶー、オレ、授業サボんないC」
「ずっと寝てんのもサボんのと一緒や」
「ウチは跡部が1位で、たっきーが次か」
「俺とジローが30位以内。ま、立海と似たようなモンやな」
「立海って皆あったまいいね。文武両道ってヤツ?」
「氷帝も一緒や。こっちは鳳と樺地が学年上位やし、高1対決は氷帝の勝ち、やな」
「ひよも成績いーしね。実技はびみょーだけど」
「あぁ、音楽と美術か……日吉の作品は、なんていうか前衛的とでも言えばええんか」
「ひよCの絵ってすぐわかるけど」
「ある意味独特なセンス」
「だね。ひよも今日来ればよかったのに」
「学年ちゃうねんから、いてもしゃーないやろ」
「テスト前は一緒に勉強したことあるよ?」
「はい?」
「岳人、ひよに社会教えてもらってたし」
「アカンやん」
「オレも樺ちゃんに国語教えてもらったー」
「…お前ら」
「跡部ん家でテスト勉強の時ね。最初跡部に教えてもらってたけど、途中で樺ちゃんになったんだC」
「後輩に見てもらってたんか…」
「忍足いなかったっけ?宍戸なんて殆どの教科で鳳が教えてたよ」
「いくら鳳が成績優秀言うても、1学年上の範囲やで?」
「跡部だって高2だけど、センター過去問で満点とるし、大学部のテキストも解いちゃうじゃん」
「アレは別格やろ」
「まぁね〜」
「で、お前は明後日、丸井ん家か?」
「う?なに、突然」
「いや、昨日言うとったやん」
「うん。あ、そーだ。岳人にゲームソフト借りようと思ってたんだった」
「ソフト?」
「丸井くんゲーム機持ってないけど、借りれるからソフトだけでいいって」
「丸井ん家でやるんか?」
「もっちろん。やっぱ格ゲーかな〜。丸井くん、ちょーうまいもん」
「ゲーム以外は?」
「え?」
「家で、ゲーム以外にやることないん?どういう予定やねん」
「えっと〜、昼に待ち合わせてご飯食べて、買い物して丸井くん家」
「夕飯は家?」
「うん!丸井くんが作ってくれるって。すっげぇ楽しみ〜」
「あいつ、菓子以外も作るんか」
「小学校から台所立ってて、昼の弁当と朝ごはんはずーっと丸井くんの担当なんだって」
「そりゃえらいなぁ」
「すっごいでしょ」
「んで、夕飯は丸井の手料理食って、その後は」
「特に決めてないけど、ゲーム?あぁ、もし漫画あったら読んじゃうかも」
「ゲームに、漫画か…」
「丸井くん漫画買わないけど、切原からよく借りてるからさ〜。読んだことないやつ、あるといいなぁ」
「なぁ」
「ん?なに?」
「お前ら、付き合うてんねやろ」
「なっ…なに、急に」
「夏から、もう4ヶ月目か。うまくいって……るんやろうなぁ、その顔だと」
「ど、どんな顔だよ。ていうか何?!」
「真っ赤やっちゅーねん」
「えぇ〜ウソ!やだやだ、見んなよ〜」
「あ〜はいはい。ほんま、可愛いわ」
「うぅ〜、カワイイってなんだよぅ」
「なぁ。恋人同士がすることって、何や思う?」
「え?コイビト?」
「デートして、ご飯食べて、家でまったりするやんなぁ」
「?」
「で、ゲームして漫画読んで、会話して?」
「うん!ついつい夜更かししちゃって寝坊しそうになるけど、丸井くんがちゃんと起こしてくれるよ」
「そりゃ良かったなぁ」
「優しいでしょ」
「はいはい」
「えへへ。丸井くん家泊まるの、楽しいんだよ。あっちが泊りにくる時も、同じくらい楽し〜!」
「恋人同士、やんな?」
「う?」
「お前の話聞いてると、恋人言うより友達」
「え…?」
「なんもせぇへんの?」
「するって…」
「別に人の恋路に首突っ込む気ないけどな。単なる疑問や」
「……」
(相手は立海の元遊び人……健全なお付き合いが信じられんっちゅーねん)
「…コイビト、がする、こと?」
「俺ら高校生やで?ソウイウの興味津々なお年頃いうワケや」
「……」
「そこまでニブないやろ。わかってるやんな?」
「……」
「てういか夏、付き合う前に手ぇ出されとったやん」
「…恥ずかCからヤメテ」
「それ以来、そういうのしてないん?」
「………してない」
「丸井、よう我慢できるなぁ」
「え…?」
「付き合ってるヤツが隣で寝てて、そういう気分になれへん男なんておらんやろ。特に付き合いたてで」
「オレ、別に―」
「エロい気分にならんって?けど、何も思わん?恋人が隣で寝てて」
「……」
「好きなんやろ?」
「………どきどき、する」
「(お…!)」
「……でも、よくわかんねぇし。丸井くん、そういうことしないもん」
「ほぉ〜」
「最初のころ怖くて泣いちゃって……それから丸井くん、すっごく優しくて」
「(丸井……不憫やな。まぁ自業自得ともいえるけど)」
「オレが、悪いのかな……丸井くんに、無理させちゃってる?」
「!いや、ジローは何も悪ない。友達からの、しかも男の告白受け入れただけでもドエライことやし、抵抗あるのも当たり前やろ」
「…ほんとう?丸井くん、後悔してない?」
「!!当たり前やん。なんであっちが後悔すんねん。俺らの姫さん奪っといてやなぁ」
「……ヒメって何だよ、バカ」
「関西人にバカはあかんて何百回も言うとるやん」
「ぶ〜。オシタリのば〜か」
「とにかく!…好きなんやな?」
「……すき」
「丸井を、ちゃんと恋人として見てんねやな?」
「………友達以上に、大切だもん」
「ならええわ」
「なんだよう…」
(ちゃんと愛されてるやん。道のり長そうやったけど、コレで何とかなるやろ。
岳人に怒られそうやなぁ………ま、丸井の立場になれば、可哀想すぎて何や哀れになるわ。
後で感謝せえよ、丸井)
―向日家での冬休み宿題会。
岳人が買出し中に、うまいことスルスルっと慈郎の本音を引き出し、さらに意識させる忍足がいました。
>>12月27日 >>目次
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2013年末、エクセできなこラテがあったような。
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