冬・12月25日





*跡部家にて

「すっげぇ〜、ちょーでかいチョコファウンテン」

「年々規模がデカくなってねーか?パーティのチョコレートエリア」

「なんか、どっかのアトラクションみたいだよねぇ」

「跡部もなんつーか、どこへ向かってんだろうな…」

「う?」

「いや、何でもねぇ。それよりお前、ここにいていいのか?」

「?なんで??」

「なんでって…クリスマスだろ、今日」

「毎年クリスマスは跡部のとこでパーティでしょ」

「そうだけどよ。今年は丸井と過ごすと思ってたから」

「丸井くん?なんで??」

「クリスマスは、恋人同士のイベントじゃねぇの?」

「そう?ずーっと家族で、中学あがってからはここでしょ。岳人も宍戸も、皆そうだC」

「…まぁな」

「それとも、岳人は彼女できたら跡部のとこ、来ないの?」

「そりゃそうだろ」

「えぇ〜?宍戸だって彼女いるのに毎年こっちじゃん」

「(亮の彼女は、家族と過ごす主義だからだろ)」

「忍足だって毎回いるC」

「(侑士は……単に、イベント時に一晩過ごして勘違いされたら面倒くさいっつー最低な理由だ)」

「樺ちゃんもだよ?」

「跡部のパーティなんだからあいつがいるの当たり前だろ―って、樺地、彼女いんのかよ?!」

「いるしー。中学の時からだよ?岳人、知らないの?」

「…初耳」

「すっげぇ可愛い子だよ。ぱっと見ふわふわなのに、シャカシャカしてる」

「お前の表現がさらにわかんねぇ」

「跡部が公認するくらい、いい子だよ」

「そりゃすげぇな。で、お前はどーなんだ」

「う?」

「お前のカレシは、跡部の公認貰えンのかよ」

「……」

「てか跡部、知ってんのか?」

「……言ってないけど、知ってるかも。跡部だし」

「まぁ、跡部だしな」

「バレたらどうしよ。怒られるかなぁ」

「怒るっつーか、そういうことじゃねぇだろ」

「えぇ?」




「泣いてまうかもしれんなぁ」


「忍足?」「侑士!」




「一人娘を嫁にやる頑固親父の心境やねん」

「オレ、次男だC」

「そういうん違おて、気持ちの話や」

「跡部の子供なの?オレ」

「まぁ、アレは恋心や友情よりも、家族愛に近い感じやろ。ジローのこと大好きやしなぁ」

「オレも跡部のこと、大好きだよ?」

「嫁ぐときに言うたれ。泣いて喜ぶで」

「とつぐ?」

「そこは気にせんとき。で、丸井はどうなん?」

「う?」

「付き合って初めてのクリスマス。一緒に過ごしたいとか、言われんかってん?」

「丸井くんはクラスメートの皆とクリスマス会だって」

「ほぉ〜。それは誘われる前に、跡部のパーティの話したんちゃうん?」

「別にクリスマス遊びたいとか、そういう話してねぇけど」

「…クリスマスはともかく、冬休みの予定聞かれて、パーティの話聞かせた、とかな」

「何で知ってんの?」

「(やっぱりな)」

「でもでも、冬休みで予定決まってたのって、このパーティと明日の宿題会、あと皆で初詣でしょ?」

「まぁ、氷帝恒例の三つやなぁ」

「だから、それ以外のところで遊ぶことにしたんだもん」

「明日は岳人ん家やし、明後日か?」

「あさっては丸井くんが皆で宿題会なんだって。だから、明々後日!」

「さよか」

「丸井くんち、泊りいくんだ〜。一人で留守番っていうから、ちょーどいいでしょ」

「……」

「えへへ、楽しみだC。あ、新しいケーキきた。取ってくるね〜」





「『一人で留守番』ねぇ。岳人、ええんか?」

「…俺がどうこう言えるモンじゃねぇだろ」

「付き合って4ヶ月、か」

「はぁ〜……ったく、俺の方が一人娘を持つ親父の心境だっつーの」

「可愛い赤頭巾ちゃんが、口あけてる狼の元へ行くと知っていて止められんっちゅうのがなぁ」

「侑士、キメェ。赤ずきんちゃんとか、言ってんじゃねー」






*一方、神奈川

『ブン太、歌わねーの?』

「ん?あぁ」

『なんか元気ねーじゃん。めっずらしい』

「ちょっと疲れただけ。ハラいっぱいだしさ」

『それこそ珍しい』

「ほっとけ。お前こそ、歌ってこいよ」

『いや〜歌はいいや。てかさ、こういうイベントでクラス会来んの、久々じゃねぇ?』

「…そうだっけ?」

『たいがい綺麗な年上のオネーサンと、大人の夜、じゃなかったっけ?』

「バーカ。そんなんじゃねーよ」

『あれれ?今までと違くねぇ?なんだ、好きな子でもできたのか』

「……」

『へぇ〜ブン太がねぇ。いつまでもつかな』

「…本気だっつーの」

『ますますへぇ〜。お前が片思いとはね』

「ちゃんと付き合ってる」

『はぁ?』

「…なんだよ」

『じゃあ何で、クラス会なんて出てんだよ。クリスマスだぞ』

「……」

『なに、彼女とうまくいってないん?』

「…別に、そういうんじゃない」

『ふ〜ん。付き合ってどんくらい?』

「夏休み終わるちょい前から」

『4ヶ月か。続いてんじゃん、お前にしては』

「あのなぁ。ちゃんとしたお付き合いだって言ってンだろ」

『後腐れない綺麗なお姉さんと一晩バイバイだったブン太がねぇ』

「俺、そんなんだった?」

『俺らからすりゃ羨ましい限りだったけどな。会ったその日にお持ち帰りされてさ』

「…そーかよ」

『で、今はちゃんとした彼女に満足させてもらってるってか?』

「……」

『あらら、地雷?』

「………」

『まじで?お前、まだヤってねぇの?』

「…してない」

『付き合って4ヶ月なんだろ?会ってその日のブン太が、どーしたんだよ。何かあったん?』

「……別に、何もねぇよ」

『お前…』

「…なに」

『本気なんだ』

「……」

『手、出せないって?』

「……」

『ほー、あのブン太がねぇ』

「……ほっとけ」

『なぁ、どんな子?お前が本気になるなんてさ』

「……どんなって、フツー」

『年上?ついにオネーサンたちの誰かに落ち着いた?』

「全然ちげぇ」

『あれ?じゃあ同年代?まさか立海?』

「…他校。同い年」

『まーじで?!』

「なんだよ」

『青春してんだな』

「ぷはっ、ば、お前、なんだそれ」

『あーあ、ほら、布巾。お茶でよかったなー』

「あのなぁ」

『可愛い子?お前がそんなに大切にするくらいの』

「まぁ……すっげぇ可愛い」

『写真とかねーの?』

「見せねぇよ」

『へぇ〜ベタボレ?』

「悪ィか」

『いいやいいや、大歓迎。お前のファンが減るしな〜』

「ばーか」

『しっかし手ぇ出せないくらい惚れてんのな』

「……俺だってヤリてぇけど」

『拒否されんのか?…彼女、お前が初めて?』

「あぁ」

『初体験ね〜』

「嫌がるとか、そういう次元じゃねぇ」

『じゃあ、怖がる?』

「……そういう感じになんねーから。怖がるかもしんねぇけど」

『いつも何してんだ?』

「何って…普通に」





―跡部邸で毎年恒例のクリスマスパーティを楽しむ氷帝の面々。
数日後の丸井家お泊まりにうきうきする慈郎に、岳人は心配でならないけど口出すわけにもいかず、どこか寂しい思いを抱えている。
一方のクラス会参加中の丸井は、仲の良いクラスメートに根掘り葉掘り『彼女』について聞かれておりました。






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