向日葵を君に | ナノ

暗闇に見えたのは


閉め切ったカーテンの間から漏れる光に、朝だということに気づいた。
_なんだろう。ひどく、古い夢を見た気がする。
ベットについているテーブルの上には、病院らしい質素で栄養バランスの良い食事が置かれていた。
そう頼んだのは僕だ。「静かに眠りたいから、朝食は机に置いといて欲しい」と。
生活リズムを正しくするのも病院の役目の一つだが、僕はここに何年もいる。頼み込めば、渋々承諾してくれた。
まだ起動していない脳をよそに、スプーンを手に取る。
口に含もうとした、その時。

「兄さん、来たよーん」

派手に扉が開かれ、がちゃん、と音が部屋中に響いた。
音がした方を見ると、真っ黒の長い髪をした、女の人。制服を着ているから、高校生だろう。
僕は妹なんかいないし、彼女は僕と同い年くらいだろう。
彼女は大きく目を見開いて、すぐに部屋番号を確認した。

「ごっめんなさい…部屋間違え…って、あっ!」

慌てて深く礼をする彼女。ちらっとこちらを見上げたと思ったら、僕のお腹らへんを見て突然声をあげた。
自分でそこを見てみると、スプーンからこぼれたと思われる野菜スープが、見事に服を濡らしていた。
あー、どうりで熱いと思った。

「え、ちょ、大丈夫ですか!?ごめんなさい…!」

彼女は急いで持っていたバックからタオルを出して、僕に駆け寄る。
初対面なのにも関わらず、その鮮やかな水色のタオルで僕の服を拭いてくれた。
長い髪が垂れて見えないが彼女の顔は見えないが、かなり焦っているようだ。

「…別に、大丈夫ですよ」

僕がそう微笑めば、彼女は顔を上げて目を見開いた。
けれど、すぐ眉を下げ、こう言った。


「…本当に、ごめんなさい」

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