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入学、二日目。

相変わらす舞ってくる桜に鬱陶しさを感じながら、門を抜ける。
昨日よりは騒がしくないが、明らかに私の気分を害するものがあった。
それは__

「おっはよー!白井さん!!」

__こいつの存在である。
朝からこんなテンションで話しかけられると、とても不快だ。
でも返事しないことには終わらないと、小さくオハヨーゴザイマス、と言った。

「えー?聞こえないなー!おはよーございます!」

馬鹿みたいに大きい声で言ってくるものだから、周りの目が自然と私に集中してくる。
…なんでこんなことになったんだろう。
遡れば昨日、こいつの流れに流された私は友達第一号というやつになってしまったのだtった。

「…おはよーございます」

「もうちょっと声出るんじゃなーい?」

なんなんだこいつは。
段々腹が立ってきたが、これを乗り切らないことには平和な毎日を送れないと自分に言い聞かせ、ふうっと息を吸った。

「っおはよーございます!!」

「いいねえ、元気いっぱい!」

あはは、と笑うこいつを睨みつけ、早足で向かう
。後ろから待ってよーと声が聞こえてくるが、気にしない。
早くその声から離れたくて、走らない程度にスピードを上げる。私はそれに夢中で、前を見れていなかった。

ドンッ

突然、何かと衝突をして、頭が真っ白になった。
暖かさを感じ、あまり痛くないというあたり、多分人だろう。
早く、謝らなきゃ。私は急いで一歩下がり、頭を下げた。

「す、すみません!」

「いや、こちらこそ、ごめんなさい」

明らかに私の不注意なのに、そう謝ってくれるその人を見上げた。
私より高い背、健康的な肌に茶色がかった髪。
先輩だろうか。
その人は苦笑して私に謝り、書類らしきものを片手に走っていった。

「篤人おせーっ」

「ごめんってー」

後ろからそんな声が聞こえる。
あの人が去っていった後も、私は動けずにいた。
…時間が止まったみたいに、さっき映像と音声が離れない。
私の横を通り過ぎていく人も、なんだか無機質に、スローモーションに見えた。
立ちすくんでいる私の肩を、誰かがポンっと叩いた。

「白井さん?どーかした?」

立ち止まって動かない私を不思議そうに谷原くんが言った。

「…いや、別に」

なんか、よくわからないけれど、どこかボーッとしている。
さっきから脳内が霞がかかっているよう。ふわふわしている。

「俺靴箱どこだっけかなあ?」

「…ばかなの?」

まあ、新しい環境に慣れてないだけだろう。
谷原くんの言葉を流して、玄関に入った。


散ってきた桜の花びらも、もう鬱陶しく無かった。

mae ato
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