雪解け(おうち掌編) | ナノ
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お揃いだらけ



白銀の髪に顔を埋め、柔らかな感触に目を閉じる。
仄かに柑橘が感じられる、爽やかなさっぱりとした香りが鼻腔を擽り、もっと感じたくて、胸一杯にその香りを吸い込む。
此処へ来た時は、花のような甘さを感じる香りだった。
それは、周が使っている洗髪剤の香りだ。
今の周の髪から香るのは、日番谷が使っている洗髪剤の香り。
周から自身と同じ香りがすることに、日番谷は密かに優越感と満足感を抱いていた。

男女では選ぶ洗髪剤は違うのだろうが、周は持ち込むことはせず、日番谷の使っている物を使っていた。
それ故に周が日番谷の家に泊まった日は、二人の髪からは同じ香りがするのだ。
周囲がそれに気が付けば尚気分が良いが、香りを感じるまで周に誰かが近付くことは気に食わない。
だから、それは自己満足だった。
同じ香りがすること、それだけで良い。

「っ……」

髪をよけ首筋に鼻先を寄せれば、その白い肌からは石鹸の香りがする。
それも、日番谷と同じ。
そして浴衣の衿からも、日番谷の浴衣と同じ香りがする。
同じ物を使っているのだから、同じ香りがするのは当然のことなのにも関わらず、こうして何度でも確かめたくなってしまう。
同じ香りだが、どこか違うのは、周自身の香りが混ざっているからだろう。
同じ香りの中にある、その唯一の香りを感じたくて、何度も吸い込む。

「隊長…?」

無言のままの日番谷に、どうかしましたかと周が窺う。

「いや、良い香りだと思って」

そう言えば、周は少し目を見開いた後、微笑む。

「隊長と同じ香りですよ」

髪も肌も、着物も、同じ香りがする。
こんなことで満たされるなんて、自分も単純なのだと思う。
それでも、こんなことでも、こんなことが、嬉しいと思うのだから仕方がない。

「ああ、同じだな」


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