「小堀…残念だったな、この間来た彼女のこと」
「はい?なに森山」
「あんなかっこいいこと言っちゃって!せっかくの彼女が出来るかもしれないチャンスをみすみす逃したんだ、きっと傷心だろう、いや絶対そうだ」
「え、いやいや待って、なんなの」
「と、いう訳で、小堀くんを慰めるために今日はみんなでナンパに行こう」
「なんでそうなる」



そんな訳で休日の練習後、ナンパだナンパだと騒ぐ森山のために、森山、中村、黄瀬、俺とで街まで来た。笠松はいつの間にか上手いこと逃げていて、早川は補習で先生に引きずられていった。俺もほとんど気乗りしなかったのだが、森山が(方向性は間違っていても)せっかく俺に気を使ってくれたのだからとついてきてしまった。

「この間のナンパ酷かったじゃないッスか森山先輩…今回は大丈夫なんスか?」
「当たり前だ、俺だってあれから進化を遂げたんだ。デルモ野郎よりモテてやる」
「ひどいッス!」
「そんな訳でまぁとりあえずは様子見だー、小堀!レッツゴーだ」
「……え?…え!?俺!?」
「今日はお前を慰めるためのナンパだからな、お前からいこう」

ぼんやりしていたら急に名指しで森山から指示が出て、なんやかんやで背中を押されみんなから少し離れた場所に出た。
行き交う人をぼんやり眺めながら考える。この間来たあの子とのことを慰めるためのナンパとか言っていたが、慰められるようなことは特にないんだ。確かにわざわざお礼を言いに来てくれたこと、なんだか嬉しかった。体調悪いあんな状況でお礼とか、そんなこと考えられる余裕なんてなかっただろうに、律儀で優しい人なんだと思った。けど別にあの子がそういう、彼女になるとか、そんなこと考えていなかった。向こうもそんな気はないだろうし、ほとんど見ず知らずの俺がそんなこと考えたら失礼な気がする。だいたい俺はあの子の名前も知らないんだ。ああ、そういえば名前も聞いていなかった。それくらい聞いておけば良かった。まあ、もう会うこともないだろうなぁ。

とりあえず、誰か女の子に声をかけなければ。でないと森山が怒るだろうし、俺を慰めるためにと言ってくれた訳だから。一回くらいはなんとかやってみよう。

「そ、そこのお嬢さん、一緒にお茶でも…し、ませ、ん……」
「へっ?」

誰でもいいから早く終わらせようと、とりあえず適当な後ろ姿に声をかけたのだが。何が一体どうしたらこんな事態になるのか。
あの子だった。海常までわざわざ来てくれた、例のあの子。やばい…逃げたい、恥ずかしい死にそう!俺もミスディレクション使えたらなあああ!!

「え、ええと…」
「いやあの!いつもこんなしてる訳じゃないんだ!これはその友達の付き合いで仕方なく!!」
「は、はぁ…な、ナンパ…なんでしょうかコレは」
「ほんとに違うんだ!こんなんいつもは「小堀なにしてんだー」

慌てふためく俺の様子を見て森山たちがやってきてしまった。ああ、もっとややこしくなりそうだ。