□ □ □

乱暴にドアが蹴破られる音で、惰眠を貪っていた男は意識を浮上させた。何事かと辺りを見回すと、無惨にもひしゃげたドアが転がっているその横に、背の高い男が数人の部下と共に立っていた。

「な、何だッ」
「──よう、邪魔してるぜ。ちょっと聞きたいことがあってな...」
「お前、...赤、髪...!?」

瞳を驚愕の色に染めた男は声を引き攣らせて呆然と呟いた。

「...ッ、お前ら、何ボサッとしてんだ!侵入者だぞ!!」

我に返って、狼狽しきった男は慌てて部下にそう叫ぶ。呆然としていた部下たちも指示を受けてシャンクスたちに向かってくるが、「──下がってろ」と一言呟いたシャンクスの覇気に当てられて呆気なく倒れてゆく。

「ひとつ、訊く。──リルをどこにやった」

昨日の昼間にちらりと見た、クルーに囲まれて快活に笑っていた姿とはまるで別人のように、溢れ出る殺気を隠そうともせずにこちらを睨み据えるシャンクスの姿に、男は文字通り蛇に睨まれた蛙のように潰れた悲鳴を漏らした。

「...市長に、言われた通り...気絶させて町の外れの倉庫に連れて行っただけだ!それからは知らない、本当だ!だから殺すのだけは勘弁し、」
「市長、...成程な。──そいつはどうも、」

男の情けなくも震える言葉を遮って、それだけ言うとシャンクスたちはガタガタと身体を震わす男をそのままに壊したドアから出ていった。

一方、町の酒場に向かったベックマンは屯していた男のひとりを締め上げていた。

「昨夜、気絶させた女を一人運んだと言ったな」
「あ、ああ、それが何か、」

簡単な仕事で大儲けをしたと、昼間から酒を煽りながら自慢げに話していた男の顔色は今や真っ青である。

「その女をどこに連れて行った?依頼主は誰だ?」
「ち、庁舎の裏口に...市長に頼まれて、そう、俺は頼まれただけだッ、だから殺さないでくれッ」
「成程な...」

それだけ言うと、ベックマンは男の襟首を掴んでいた手を離して酒場を出て行った。急いで電電虫を取り出すと端的に告げる。

「──お頭、リルの居場所が分かったぞ」
「...そうか、分かった」

電波の向こうから返ってきた懸念と安堵の綯い交ぜになった声音に苦笑を漏らすと、ベックマンはその声の主と合流すべく足早に歩き出した。

+++

「...さて、どうしよう」

一方のリルは、地下牢でまだ考え込んでいた。あっさりと捕まってしまった悔しさも相俟って、脱出の際についでにどうにかして市長の悪事を暴いていきたいと思ったのだが、どうにも上手い方法が思いつかないのである。そろそろ脱獄しないとあの船長たちが自分の不在に気づく頃だ、と思っていると、案の定この数日間ですっかり耳に馴染んだ我らが船長の声が一帯に響いた。

「リル────!!無事か!?」
「ああ、もう見つけてくれたのか...シャンクス!」

リルは予想以上に早い到着に我知らず少し嬉しそうに小さく笑みを浮かべると、立ち上がって服の裾を軽く払い、自身の船長の呼び掛けに答えるように声を張り上げる。

「──武装色、硬化」

覇気を纏わせた腕で難なく鉄格子を破り、人間離れしたスピードで階段を駆け上がる。シャンクスたちの襲来に庁舎の人員や自警団の面々は手一杯のようで、がらんとした庁舎の中を走り抜けて交戦中のエントランスへと走り抜ける。そして真っ先に目に飛び込んできた赤い色に笑顔で手を振った。

「ごめんシャンクス、ちょっと戻るの遅くなっちゃって──うわっ、シャンクス?」

こちらを認めて走ってきたシャンクスに抱き締められる。

「──馬鹿野郎!心配させやがって...無事か!?」

怒りと安堵と不安とが綯い交ぜになって何とも言えない表情で紡がれた言葉に大きく頷く。

「大丈夫。...ごめんね、」
「船に戻ったら説教だな」

珍しく笑みを浮かべてベックマンが笑えないことを言う。リルはその言葉にも頷いた。

「今回の件ではお叱りは幾らでも受けます。...心配掛けちゃってごめんね」
「それは後でお頭に言ってやれ。...今はひとまずこの片付けが先だな」

肩を竦めて言われたその言葉に頷いて、居並ぶ敵の面々に向き直る。赤と黒と銀色と、並んで相手を見据える3人に最早敵などなかった。

花弁と落丁

すみませんup後僅か3時間で修正入りました...、大して変わってないですけど...!慌てて書いたので誤字脱字等ありましたらご連絡ください。(17/01/13)
レイアウト若干修正(03. 06)

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -