「...どうもわたし、この世界の人間じゃないみたいです」

わたしがカミングアウトという名の謎発言(?)をかました後、3人は呆気に取られたような顔でこちらを凝視していた。その視線の主成分は困惑。...残念ながらそれはそうだろう、無人島の砂浜で拾った女がいきなりこの世界の人間じゃないなんて言い出したら、誰だって困惑するに決まっている。寧ろ笑い飛ばされなかっただけ良い方かもしれない。

「...どういうことだ」

その沈黙を破ったのはかたちの良い眉をすこし顰めたトラファルガーさんだった。さすがは船長さん、落ち着きを取り戻すのが早い。

「ここ...この世界はわたしの居た世界じゃないみたいなんです。わたしの元いたところには、海賊も居ないし世界政府なんてものも存在しない。わたしが食べたっていう悪魔の実なんてものも、聞いたことさえありませんでした」
「...異次元から来たとでも言うつもりか?空想小説じゃあるまいし」
「...いや、紫音の言っていることは本当だろう」
「えっ」
「えっ、キャプテン!?」

疑わしそうに眉を顰めたペンギンさんの言葉に、まあそうですよね...と苦笑する。わたしだって信じたくないし、さすがに突拍子も無さすぎるか、と納得していたところにトラファルガーさんがそんなことを言い出すものだから、思わず勢いよく顔を上げてしまった。驚いたのはペンギンさんも同じだったようで、声を揃えて驚きの声を漏らす。

「ここは"偉大なる航路グランドライン"、常識の通じない海だ──何があってもおかしくねェ」
「...信じてくれるんですか」
「あァ。昔、古い文献を漁っていたときに見たことがある。...専門外だから詳しいことは知らねェけどな」

事も無げに言ったトラファルガーさんに恐る恐る尋ねると、鷹揚に頷かれる。自分でも荒唐無稽な話だと思う。てっきり信じては貰えないものだと思っていた。何を馬鹿なことを、と笑い飛ばされて終わりかもしれないと思っていた。──けれど、全船員の命を預かるこの人がこう言ってくれるのなら。わたしは覚悟を決めて、トラファルガーさんに向き直った。

「──トラファルガーさん、お願いします。…帰る方法が見つかるまで、わたしをこの船に置いてください。...雑用だって何だってします、だから、」
「あァ、元からそのつもりだ」

焦って言葉を紡ぐわたしの頭にトラファルガーさんがぽん、と手を乗せた。

「これも何かの縁だ、暫くはウチで面倒見てやるよ」
「え、」
「安心しろ、衣食住は取り敢えず保証してやる。──お前は俺の研究対象だ」

後半に何やら不穏な言葉が聞こえたような気がするのだけれど、そんなこんなで、わたしは暫くこのハートの海賊団にお世話になることになったのだった。

まつわる水彩度

レイアウト若干修正(03.07)
本文加筆・修正(17.03.30)



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