ベルモットとレッスン
「ジンともいつそういうことになるか分からないのよ?その時感づかれたのでは困るわ」
「……えっと、あの、そういうことって?あとこの体勢、何?」
なぜだかベルモットに押し倒されている。
「今から特別レッスンしてあげる。光栄に思いなさい?世界的大女優の手ほどきなんてそう受けられるものじゃないわよ」
「えっちょっ、アッ
―――」
するり、と入ってきたしなやかな手に、思わずどぎまぎした。最初は何も分からずされるがままになっていたが、やがてその手があちこちをくすぐるように撫でさすりだすと、何をどうしていいか分からなくなった。そんなベレッタの反応を見て、ベルモットの紅いくちびるが美しく弧を描く。
「あら、ずいぶんかわいい反応するじゃない?」
軽口に返事をする余裕などない。それを分かっているのかいないのか、ベルモットの滑らかな手はいともたやすくナマエの服の紐をほどいた。大人っぽいサテンのドレスは紐をほどいただけで簡単にしゅるりと下まで落ちてしまう。ナマエの服も靴も化粧品も装飾品も、全てベルモットが見繕ったものだ。彼女に与えられた服を、彼女によって解かれていく。
真正面から顔を覗き込まれ、赤くなっている自覚のあるナマエは思わず顔をぐいっとそらした。ベッドに押し倒されて、裸の背にシーツの感触が伝わる。まじまじと表情を観察されているのが分かった。いっそ目をつぶりたい。
「目、つぶったらダメよ」
「…分かってるもん」
拗ねたような声にベルモットはまた笑い、そのままナマエの首筋に顔をうずめた。整った鼻梁が首筋に触れるか触れないかのあたりを這う。ふっと息を吹きかけられ、ぞくりと肌が粟立った。ぬるり、と温かい感触。首筋を舐めあげられると同時に、左手で右の肩を押さえられ、右手が足の付け根の辺りに触れた。
「…っ」
頭がショートしそうだ。何が起こっているのか分からない。たまらず目をぎゅっとつぶると、「悪い子ね」と囁く声がして、首筋にちくりと痛みが走った。
「あっ…な、なに…?」
「………キスマークも知らない子どもなのよね、あなた」
目を開けて至近距離にあるベルモットの顔を見上げると、溜め息でも吐きそうな、何やら複雑な表情をした彼女と目があった。
「…まぁいいわ。最初だから、手加減しておいてあげる。おいおい慣れてもらうわよ」
言っていることの意味がよく分からない。けれどこれで終わりということではないようだ。それだけ把握したナマエは、訳が分からないまま、ただただベルモットに翻弄された。