バーボンと子ども
※ベルモット立ち合いの上バーボンと寝ることになったベレッタ。
あまりにも怯えるベレッタに、バーボンは罪悪感を覚える。
ホテルの一室にて。なぜか同席しているベルモットに、ベレッタを押し倒しているバーボンは口を開いた。
「見られながらする趣味はないんですが…」
「この子の大切な初めてだもの。ついていてあげなきゃどうなるか分かったものじゃないじゃない?私のことは気にしなくていいわよ」
「気にするに決まってますよ」
しかしまあ、命令とあらば仕方ない。結局バーボンはベルモットの監視のもとでベレッタを抱いたのだった。当然保護者の監視付きなので、無体をはたらくわけにもいかず。しかし中身が子どもでも体は大人の女性である、ベレッタは結局は快楽を拾ってバーボンに思う様泣かされたのだった。
その後はバーボンも開き直り、利用できると踏んでベルモットが居ないうちに揺さぶりをかけたりするようになった。何せあのベルモットのお気に入りなのだ。情報を引き出せるだけ引き出そうとバーボンが考えたのも当然といえば当然のこと。
当然“そういう”行為に快楽を覚えるほどの年齢に達していないベレッタにとっては、悪夢以外のなにものでもなかった。
「っ、バーボンが虐めたってベルモットに言ってやる!」
「告げ口って…君は小学生ですか。…とはいえ、それは困りますからね。今日のところは君にいいようにしてあげますよ」
そう言って続きを始めたバーボンに、ベレッタは本気で抵抗した。
「これ、やなの!」
「…これって、セックスがですか?心外ですね、手管はそれなりにある方です…君を気持ちよくさせる自信はありますよ?大丈夫、今日は優しくしますから」
そう言って、バーボンは甘い笑みを浮かべた。今までこれで陥落しなかった女性はいない。こういった裏社会には商売女はつきもので、そこで情報を得るためならバーボンはこういったことも厭わない。しかしベレッタにはどうやら効かなかったらしい。
「やだ!」
臆面もなく叫ばれて、プライドが傷つくより先に、嗚呼本当に子どもなのだな、という実感が勝った。子どもなら色仕掛けが通用しなくてもしょうがない。全くこれで自分と同年代だというのだから恐れ入る。バーボンは溜め息を吐いてハンズアップした。
「分かりました、もう触りません」
今は。と心の中でだけ付け加えておく。どんなに嫌がられても彼女がベルモットやジンと近しい人物である以上利用しない手はないし、行為に持ち込めば彼女が理性を飛ばす、というのも実証済みだ。理性を飛ばしたときに揺さぶりを掛ければ何か分かるかもしれない。
「ほんと?」
いずれはどうにか行為にもちこんで情報を得よう、と決意していることなど微塵も感じさせない笑みで、バーボンは「本当ですよ」と優しく微笑むのだった。
*
「…バーボン、あなた何をしているの?」
「何って…トランプの片づけですよ」
ホテルの一室に戻ってきたベルモットは、想定していたどんな状況とも違う状況に思わず足を止めた。ホテルの部屋にはトランプが散らばっており、その横にはベレッタが寝転んでいる。
「ずっと一緒に遊んでいたんですが、疲れて眠ってしまいまして」
仮にも三十手前の男女がホテルの一室で一晩過ごして、トランプをしていた?ベルモットは鼻で笑った。
「あら、私はてっきりあなたがよからぬ考えでもおこして妙なことをするんじゃないかと気が気じゃなかったのだけれど」
「心外ですね。本当にトランプをしていただけですよ」
ベルモットはじっとバーボンの様子を観察した。嘘を言っている様子はない。
「…そう。あの子の遊び相手をしてくれてありがとう、と言うべきなのかしらね」
「礼には及びませんよ。僕が好きでしたことですから」
バーボンは慇懃に笑って見せた。