BLOODY MONDAY

「不死身のナマエ?…バカなこと言うなよ、不死身の人間なんて」
「いるのよ、それが。私は直接この目で見たもの。幼い頃見た姿と、全く変わっていないあの人の姿をね!」

 狂気じみたマヤの言葉に、藤丸は絶句した。確かに、各諜報機関のデータに侵入する際、何度か見たことがある。

あらゆる国のあらゆる重要機関に接触した記録のある人物―――Phoenix.

「フェニックス…」
「ええ、それが彼の通称よ。出生地、年齢、性別、ともに不明。…まぁ、目撃情報によれば東洋人の男らしいけれど。あなたも気を付けることね。彼は誰の敵でもない代わりに、誰の味方でもない」
「あ、待て、くそっ!」
「ふふ、こんなお話に動揺するあなたが悪いのよ。それじゃあまたね」

 藤丸が記憶を必死にたどっている際に、マヤは隠し持っていた銃で窓を破り、逃亡してしまった。



「っくそー、後少しで捕まえられたってのに!」
「でも今回は藤丸が油断したんだろ?精進しなきゃな!」
「っちぇー、ナマエさんが手伝ってくれたら早いのによ」
「なーに言ってんだ。君たちの戦いに首をつっこんでたら命がいくつあっても足んないよ」
「あーもう、フェニックスのばかやろー!!」

 八つ当たりとばかりに叫んだ藤丸に、ナマエは苦笑した。まさか自分がそのフェニックスだなんてことは口が裂けても言えないが。

 ナマエも最初は傍観しておくつもりだったのだが、興味半分にあちこちの諜報機関に探り込んでいるうちになぜかそんな二つ名がついてしまったのだ。何も犯罪はやっていないし、むしろ悪事を未然に暴いたこともあるので、いつの間にか謎の人物として各国の裏組織に定着してしまったのだ。完全に想定外ではあったが。

「にしてもさ、父さんの知り合いっていうけど…ナマエさんて一体何者?」
「ん?何だよいきなり」
「いや……この前気になってナマエさんの戸籍調べたんだけど……あれ、フェイクだろ?」
「おいおい…何やってんだよ藤丸…」

 あっさりクラッキングを告白した藤丸に、ナマエは頬をひきつらせた。

「何か事情があって身元隠してんの?」
「いや?何も弄ってなんかいないし、私はただの一般人だよ」
「うっそだー。だって性別も年齢もでたらめだったぞ?ナマエさんが50過ぎのオバサンなわけないじゃん!どー見ても俺より少し上くらいの兄ちゃんだろ?」
「はは……」

 だからそれが真実だというのに。



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