図書 館戦 争
「えっ、ナマエさんって稲嶺司令より年上なの!?」
「そんなことがあり得るのか…」
「でも、あの司令が敬語を使ってんのよ。他の古株の幹部もみんな敬語だし、逆にナマエさんは全員にタメだしね。公式の場以外では」
上から順に、笠原、手塚、柴崎である。笠原と手塚はナマエの姿を思い浮かべて背筋を冷やした。どう見ても自分たちと同期くらいにしか見えない容姿だ。…時々言っていることが少し、いやかなり、老成しているとは思うが。
「待って待って、だって私最初タメ口使っちゃってたよ!?」
「あー、アンタはぎりセーフでしょ。許されるわよ」
「何でよっ」
何でって、そういうキャラだからだよ。
そんな風に三人がじゃれあっているのを、微笑ましく見つめる一人の人物に、三人は気付かない。三人の傍でそれを見ていた堂上は呆れた表情を浮かべ、小牧は苦笑をもらした。
「別に私は構わないよ?」
「………ナマエさんッ!い、今の話…」
「聞いてたけど、怒ってないよ」
そう言うナマエの顔は、本当に穏やかだ。笑顔の裏にも時々怒りが見える小牧とは違って、本当にどこまでも優しい笑みが浮かんでいる。
「年くってるだけで階級も大したことない嘱託だし」
三人は恐縮するばかりだった。
*
「…あんまり若いのを甘やかさんでください」
「何言ってんの、堂上。お前だって最初思いっきり年下と思ってタメきいてたくせに」
「………」
「小牧はその点スマートだったよね。様子見て要領よく敬語になってさ。堂上だけ今のあいつらみたいに恐縮しててさー。いやー、見てておもしろ…かわいそうでしょうがなかったよ」
面白い、と言いかけたナマエに、堂上は憮然とした。ナマエは正式な図書隊員ではなく、タスクフォースのアドバイザーだ。いつ作られた役職かも不明だが、書類の上では図書隊発足から存在し、代替わりはいまのところ一度もしていない。