図書 館戦 争

「えっ、ナマエさんって稲嶺司令より年上なの!?」

「そんなことがあり得るのか…」

「でも、あの司令が敬語を使ってんのよ。他の古株の幹部もみんな敬語だし、逆にナマエさんは全員にタメだしね。公式の場以外では」

 上から順に、笠原、手塚、柴崎である。笠原と手塚はナマエの姿を思い浮かべて背筋を冷やした。どう見ても自分たちと同期くらいにしか見えない容姿だ。…時々言っていることが少し、いやかなり、老成しているとは思うが。

「待って待って、だって私最初タメ口使っちゃってたよ!?」

「あー、アンタはぎりセーフでしょ。許されるわよ」

「何でよっ」

 何でって、そういうキャラだからだよ。

 そんな風に三人がじゃれあっているのを、微笑ましく見つめる一人の人物に、三人は気付かない。三人の傍でそれを見ていた堂上は呆れた表情を浮かべ、小牧は苦笑をもらした。

「別に私は構わないよ?」

「………ナマエさんッ!い、今の話…」

「聞いてたけど、怒ってないよ」

 そう言うナマエの顔は、本当に穏やかだ。笑顔の裏にも時々怒りが見える小牧とは違って、本当にどこまでも優しい笑みが浮かんでいる。

「年くってるだけで階級も大したことない嘱託だし」

 三人は恐縮するばかりだった。



「…あんまり若いのを甘やかさんでください」

「何言ってんの、堂上。お前だって最初思いっきり年下と思ってタメきいてたくせに」

「………」

「小牧はその点スマートだったよね。様子見て要領よく敬語になってさ。堂上だけ今のあいつらみたいに恐縮しててさー。いやー、見てておもしろ…かわいそうでしょうがなかったよ」

 面白い、と言いかけたナマエに、堂上は憮然とした。ナマエは正式な図書隊員ではなく、タスクフォースのアドバイザーだ。いつ作られた役職かも不明だが、書類の上では図書隊発足から存在し、代替わりはいまのところ一度もしていない。



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