ハリポタ

「えーっと、なになに、”オリバンダーの店”?」
「おや、お前さん、魔法使いかね?入った入った。今年創業したばかりなんだが、ウチには良い杖が揃っているよ」

 その店がどの物語に登場するのかを思い出す前に、ナマエはやたらと強引な店主に店に連れ込まれた。

 そして、それがハリーポッターの中に出てくる店であること、ついでに創業は紀元前382年であることを思い出したのは、杖を買わされた後だった。



「いや、だから、オリバンダーさん。私は魔法使いじゃないんですって」
「はっはっは、面白いことを言う。じゃあ何だね、ヴィーラだとでも?たしかに兄ちゃんにしては綺麗な顔をしてるが、どう見ても一般魔法使いだろう」
「いやだから……」

 そもそも性別が違う、と主張すべきなのかどうか、ナマエは頭を抱えた。論点はそこではないような気がする。


***


「アルバ……何だって?」
「……アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。長いから好きに省略してくれて構わないよ」

 ナマエは二千年ぶりに絶句した。やっと。やっとだ。

「ちょっと待ってくれ今記憶を掘り返してくるから。たぶん重要人物だった気がするっていうか、うん、やっぱりそうだな」
「……ペンシーブでも持ってくるつもりかい?」

 いや、彩雲国の仙人が作ってくれた不思議道具です。
 とは言えず、ナマエはしばらく黙って自分の記憶を掘り起こし、ようやくハリーポッターの概要を思い出したのだった。紀元前からいろいろやっていたせいで記憶があいまいになっていて、危うく忘れてしまうところだった。

「あー、君がアルバス……いやー若いね」
「君より若くない人間なんてそうそういないだろうけどね」
「確かに。ニコラスが生まれた時も祝いに行ったし、あやしてやったしな」

 入学したばかりのアルバス・ダンブルドアは流石にまだ若い。というか幼い。とても新鮮だ。
 ちなみにニコラス・フラメルが生まれた時も何とか記憶を掘り起こし、ようやく物語の登場人物が現れてきたことのお祝いに行ったのだった。まだ赤ん坊のニコラスのおしめを代えてやったのもいい思い出だ。

「………本当に君は規格外だよね」
「うん。自分に母性なんてものがあったのは新たな発見だったよ」
「母性?父性の間違いだろ?」
「はは、ダンブルドアの目まで欺けるなんてある意味光栄だな」

 何だかもはや年齢どころか性別不詳の化け物にでもなってしまった気分だ。不思議そうな顔をしているダンブルドアに、ナマエは遠い目をした。



「あ、また転んだ。君って意外とドジだよね」
「違うんだアルバス、信じられないだろうが、私はマグルなんだよ」
「…………あーはいはい」

 出たよ、とでも言いたげな目つきで適当に流されて、ナマエの心はいたく傷ついた。本当にナマエに魔力はないというのに。
 そしてホグワーツは魔力を持たない人間にとってはただの古びた城だ。流石に千年以上過ごしているのでどこに穴があるのか、どこで階段が動くか、なんてことは体が覚えているのだが、時々移動する階段などでは転んでしまうのもしょうがないことだろう。

「全くマグルに不親切な城だよ。サラザールは私に見えるよう魔法をかけてくれたのに、ゴドリックがいたずらで私に見えないようにして、元に戻さないまま死んじゃったんだよ」
「……創立世代の名前をそうさらっと出さないでくれよ…」
「二人ともいいやつだったんだけどなー。意見の違いでああもケンカが長引くなんてね…」

 遠い目をするナマエに、半分くらいどうせ冗談だろうと、アルバスは適当に受け流すのだった。



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