カールスパッド・ケイブ

「おはようナマエ。ほら、起きて。洞窟探検に行きましょう」
「ん…洞窟?」
「カールスパッド洞窟。一斉に飛び立つ蝙蝠が見られるそうですよ」

 目を擦りながら起き上がると、ベッドには既にナマエしかいなかった。レイは既に準備万端という体で荷物をまとめており、あたりを見回すと部屋の隅で上半身裸のまま荷物を片付けているシュウがいた。思っていた通り、ばきばきに筋肉のついた体だった。
 あんなにあった酒瓶は全て空になって、壁際にまとめられていた。

「シャワー浴びますよね?」
「あー…はい、浴びます…」
「って言いながら寝ないで、こら。」
「んー…あと五分」

 そんな風に和気あいあいとしながら出立の準備をした。
 ハンカチやショーツはバスルームで洗ってドライヤーで乾かしておいた。いつもこんなに贅沢に水が使えるわけではないので。





 カールスパッド洞窟は、それなりのスケールだったが、テキサスの砂漠と同じで二十分もすれば景色に飽きてしまった。雄大な景色は雄大すぎて変化がないのだ。十五万羽の蝙蝠が一斉に飛び立つのは夜の八時半ごろだそうで、結局それも見られなかったが、三人であれこれ言いながら洞窟を回るのはそれなりに楽しかった。

 そしてまたロングディスタンスドライブの続きが始まる。もうあと三日もあればカリフォルニアに着くだろう。

「じゃ、ここからはそろそろ北上しましょう。ロズウェルには行きますか?」
「ロズウェルって、あのロズウェルですか?ロズウェル事件の」
「ええ、そのロズウェルですよ」
「うわ、絶対行く。行きます。そういう胡散臭いの好きなんですよね、」

 兄が。とは言わず、運転席のレイから目をそらす。昨夜のことは全部はっきりと覚えているわけではないが、全部忘れたわけでもない。彼らもそう酔っているようには見えなかったから覚えているはずだ。何も触れられないので黙っているが、…やはり少し気まずい。聞きたいことはあるのに、うまく切り出せない。
 そんなナマエにレイは笑いかけた。

「じゃあ、胡散臭い宇宙人でも見に行きましょうか」

 そして車はまたアメリカ西部の乾燥した大地を走り始めた。
 走っているうちに、砂漠はだんだん草原へと変わり始めた。

「といってもまだ分類上は砂漠ですけどね」
「へえ、そうなんですか」
「まあ、ニューメキシコといえば大草原地帯ですが。…あ、そうだ、ホワイトサンズ国定公園にも寄りましょうか」
「国定公園?」
「準国立公園ってとこですね。…それともカジノにでも行きます?」
「カジノはいいです」
「何事も経験ですよ?」

 レイが笑うのを、ナマエは助手席から見詰めた。この数日間、シュウとレイがかわるがわる運転する横顔をずっと見詰めてばかりいる気がする。




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