変わっていくもの
※偽装カップルの延長(シュウのお茶目)ですが人によってはほんのり赤安っぽく見える要素あり。気になる方は無理せず閲覧を回避してください。
「………暑い」
「はは、流石に三人は厳しかったですね。エアコンは?」
「つけてる。壊れてるのかもな」
間に泣き疲れて眠ってしまったナマエを挟んで、レイとシュウは穏やかに言葉を交わした。スコッチの件でいがみあっていた(レイが一方的に噛みついていたともいう)頃なら絶対に考えられなかった光景だが、時が流れれば人は変わる。こうして彼の妹に会ったりもする。
「よかったのか。あんなことを言って。」
「んー、まずかったかも……でも、スコッチ相当妹のこと気にしてたみたいなんで。二人で酒を飲んだ時はしょっちゅううだうだ言ってましたよ。そんなつもりじゃなかったんだー、って。だから、お兄さんから聞いたってのはあながち嘘でもないし」
「あのスコッチが、か」
「…まあ、あなたと三人で居た時は大抵仲裁役に回っていましたから、あなたがそんな姿を見たことがないのも無理はありませんよ」
「仲裁されていた自覚はあったのか」
「馬鹿にしないでください。あの頃は…僕も若かったんです」
さら、とレイはナマエの髪を梳いた。スコッチと同じ、黒くて少し硬質な髪。
レイは遠い目をした。
「次にもし妹が話してくれたらああ言うんだ、って。……代わりに僕が言ってよかったのかは分かりませんけど」
二人はしばらく無言でいた。手持ち無沙汰なシュウの手はナマエの背をとん、とん、と叩き出し、代わりにレイの手が止まる。
「に、しても」
「?」
「愛してる、なんて熱烈な言葉。俺もまだ言われたことがないんだがな」
にやりと笑ってシュウがナマエごとレイを抱き込むと、レイは露骨に顔を歪めてつんと顔をそらした。その仕草が何だかかわいらしくて、ぎゅうと腕で抱きしめる。
「…あまり、調子に乗らないでください」
和解は既に済んでいたが。
彼がここまで気を許してくれたのは、スコッチの妹であるこの少女のおかげかもしれないな、とシュウはこっそり笑った。