何も言わない平穏
「あまり調子に乗らないでくれます?」
「だがあの子は俺たちをゲイカップルと思っているんだ。あまりにも何もしないのも不自然だろう?」
「……フリだけですからね!」
「それは残念」
「ふざけるな」
ナマエが用を足しに行っている間。二人はやいのやいのとやり取りをしていたが、遠目に見ればそれも十分カップルに見えていることにはレイだけが気づいていない。
「に、しても…本当にスコッチにそっくりだな。食べ物の好みまで」
「………というよりはわざと真似しているんでしょう。死んだとも知らずに、いつか帰ってくるかもしれない兄を恋しがって」
「…事実を言うか?」
「………いいえ」
レイははぁ、と息を漏らした。カリフォルニアまであとどのくらいだろうか。
こんな平和な旅なら、いつまでも続けばいいのに。と現実逃避のように思った。